筑波大学の研究グループは,ガラス上に合成した半導体薄膜として最高の正孔移動度を持つゲルマニウム(Ge)薄膜の開発に成功した(ニュースリリース)。
Geは,光検出器や高効率太陽電池の基板材料として利用されている他,シリコンに代わる高性能トランジスタの材料としても注目を集めている。
ガラスやシリコン酸化膜などの絶縁体の上に高品質なGe薄膜が形成されれば,高性能な薄膜トランジスタから成るディスプレイ端末や3次元LSIに加え,安価で高効率な薄膜太陽電池の実現が期待されることから,基板や既存の素子にダメージを与えないプロセス温度(500℃以下)で,Ge薄膜を形成する研究が国内外で行なわれてきた。
研究では,簡便な固相成長法を用いてガラス上に多結晶Ge薄膜を低温合成(450℃以下)するとともに,その前駆体となるGe薄膜の密度に着眼した。その結果,高密度かつ非晶質のGe薄膜を前駆体に用いることにより,固相成長後の多結晶Ge薄膜の結晶粒が劇的に大きくなり,正孔移動度が飛躍的に向上することを発見した。
今回得られた正孔移動度(340㎠/Vs)は,絶縁体上に低温合成したあらゆる半導体薄膜の中で最高の値となる。この研究で得られた多結晶Ge薄膜を用いることで,薄膜トランジスタや太陽電池の性能向上が期待される。
また,プロセス温度は375℃まで低減することができ,プラスチック(ポリイミド:400℃耐熱)を基板としたフレキシブル・デバイスへの展開も期待される。さらに,研究で構築した結晶成長の技術・知見は,Geに留まらず,IV族混晶半導体や化合物半導体など,様々な薄膜材料への応用が期待できるとしている。