明治大学の研究グループは,相関解析という統計手法を用いて,ラン藻によるバイオコハク酸の増産に成功した(ニュースリリース)。
生物は様々な化合物を生産する。その中でもコハク酸は,バイオプラスチックの原料となることが知られている。現在,コハク酸の多くは石油から化学的に合成されている。しかし,石油資源の枯渇や温室効果ガスの発生の問題から,環境に優しい生物を用いた生産系が望まれている。
特に,光合成を用いた生産系は,二酸化炭素から直接バイオプラスチックを合成することが出来ることから,注目を浴びている。
研究グループは,光合成を行なう細菌であるラン藻が,嫌気・暗条件でコハク酸を生産することを発見している。これまでに研究グループは,コハク酸を増産する遺伝子改変株を複数取得してきたが,コハク酸増産に共通するメカニズムは分かっていない。
今回,コハク酸増産株の遺伝子発現量を測定したところ,コハク酸増産株に共通した発現パターンを発見した。この発現パターンをもたらす原因を特定するため,相関解析を用いて遺伝子発現量を分析したところ,レスポンスレギュレーターRre37がコハク酸増産に寄与することが示唆された。
Rre37を過剰発現させ,さらにRNAポリメラーゼシグマ因子SigEを過剰発現させた遺伝子改変株を作製したところ,1リットルの培養液あたり140mg/dayのコハク酸の生産に成功した。この値は,これまでのラン藻を用いたコハク酸生産のなかで最高効率となる。
ラン藻によるバイオプラスチックの生産系は,実用化レベルに達していないが,今回の研究成果は,コハク酸の増産だけでなく,ラン藻の代謝制御の一端を明らかにするもの。このような光合成生物の代謝制御機構の理解を通して,ラン藻によるバイオプラスチックの工業生産の実現が期待されるとしている。