「熟成した8K」の開発に移行するNHK放送技術研究所

■フル解像度8K単板カメラシステム

カメラも大きく進化を見せた。これまで技研は,人の目に感度の高いGを1,600万画素,RとBを800万画素ずつ,計3,300万画素を1枚に収めたセンサーを用いた単板式カメラ(デュアルグリーン)と,RGB各色に3,300万画素の解像度を持つセンサーを用いた3板式カメラ(フル解像度)の2種類を開発してきた。

しかし,デュアルグリーンカメラはその構造上,あくまで8K「相当」の画像しか撮ることができず,一方でフル解像度カメラは3枚のセンサーに加えて大型のプリズムを用いるので,カメラヘッドが大型になってしまい,可搬性に問題があった。

今回技研が開発したのは,フル解像度を持つ単板のセンサー。RとBは3,300万画素,Gは6,600万画素の計1億3,300万画素を持つ。米FORZA Siliconと共同開発した。1画素のサイズは2.45 μm。

このセンサーを使ったカメラも製作した。単板式になったことで,フル解像度ながらカメラヘッドを従来の1/7となる6 kgにすることができた。また,センサーサイズは35 mmフルサイズなので,映画や一眼レフカメラ用のレンズを流用することも可能。生成される100 Gb/sの信号は小型の波長多重伝送装置によりハイビジョン用のカメラケーブル1本で伝送できる。

HLGにも対応。現在のところフレーム周波数は60 Hzなので,今後,フルスペック8Kに対応するため120 Hz化を進めるとしている。

■次世代イメージセンサー

超小型裏面照射型イメージセンサーは,3,300万画素ながら画素サイズを1.1 μmとすることで,光学2/3インチに相当する小型化を実現した。これは静岡大学と台湾TSMCとの共同開発によるもの。

カラーフィルターを付けていないのでモノクロの出力になるが,階調は12 bitをとなっている。特筆すべきはフレーム周波数で,フルスペック8Kの倍となる240 Hzを実現,データレートは144 Gb/sとなっている。

このフレーム周波数を実現したのは高速A/D変換回路。従来の2段方式サイクリックA/D変換回路から,新たに開発した逐次比較型のA/D変換回路を採用したことで,A/D変換周期は1.9 μsから0.92 μsと,約半分になった。

ただし,微細化を進めたことで,素子サイズはレンズ集光の限界近くになっており,8Kでの解像が難しくなる可能性があるほか,ダイナミックレンジが狭いという問題もあるという。