新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と焼却炉メーカーのアクトリーは,太陽光による発電と,太陽熱による熱回収を同時に行なう追尾集光型太陽エネルギー回収システムの開発に成功した(ニュースリリース)。
これまで,ソーラーパネルによる発電システムや,集熱器等により太陽熱を40℃程度の温水として熱回収するシステムはそれぞれ存在していたが,太陽光による発電と60℃以上の高温水を用いた太陽熱の熱回収を同時に行なう架台設置型ハイブリッドシステムの開発は,世界で初めてとなる。
アクトリーは,NEDOの「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」において2016年度に採択され,石川県工業試験場,東京大学と共同研究体制で,高効率発電モジュールと光学シミュレーションによる独自の集光技術を開発し,これらを組み合わせた新しい太陽エネルギー回収システムを開発した。
このシステムは,GPS(衛星利用測位システム)を搭載したパラボラ型の反射鏡が1列に4個並んで6列で1ユニットを構成し,1列ごとに太陽の方向に向きを変えるため,高い集光率が得られる。さらにこのシステムの特徴として,集光した太陽エネルギー量のうち,25%を電気として,40%を熱(高温水)として回収するため,太陽エネルギー変換効率はあわせて約65%にも上る。
今回,アクトリー本社敷地内に8ユニット(約13kW規模)を設置し,新システムの性能や実用性(耐久性・耐候性),遠隔制御によるシステム保守運用の有効性の確認を行なうことを目的に,2017年9月より本格的に実証試験を開始する。
今後は,同様のシステムを栃木県のアクトリーR&Dセンターと,宮城県のイチゴ農園施設に設置して,気候の違いによる性能効果についても比較し,これらの一連の実証試験の結果をもとに,「iU-SOALA(インテリジェンスユニット ソアラ)」として商品設計を行ない,2018年度の事業化を目指す。
また,1ユニットの設置面積は約15㎡とコンパクトであり,電気と温水を利用する農業ハウス,養殖施設,福祉施設,コンテナ式データセンターなどへの用途への利用を見込む。さらに,遠隔制御によってシステム保守運用を行なうため,山岳エリアや離島での需要も期待されるとしている。