広島大学の国際研究チームは,日本のX線天文衛星「すざく」の観測データを解析することにより,多くの銀河団において鉄が銀河団を満たす高温プラズマの中で外縁部まで同じように存在していることを突き止めた(ニュースリリース)。
宇宙に存在する元素のうち,水素とヘリウムは宇宙最初のビッグバンによって主に生成されたと考えられている。一方,それより重い炭素,酸素,珪素,鉄などの元素は,宇宙の進化ともに形成された銀河の中の星の中で,核融合によって生成されたと考えられている。
しかし,そうした重い元素がどのように宇宙全体に広がったのかは定かではなかった。
研究チームは,10個の近傍銀河団を調べ,すべての銀河団において,高温プラズマ中の鉄の含有量が太陽の1/3でそろって分布していることを示した。
この結果は,約100億年前に銀河団が形成されたよりも前に,宇宙の中で鉄が作られて銀河間空間にばらまかれたことを示唆する。こうした鉄などの元素は,初期銀河の中の星の核融合で生成され,早い段階で非常に多数の超新星爆発によって銀河の外に撒き散らされたと考えられる。
もし,これらの重い元素が比較的最近生成されたとすると,その分布は銀河団ごとに異なると考えられるが,観測結果はそうなっていなかった。