大阪大学,理化学研究所(理研)を中心とする日仏英露の国際研究グループは,X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを用いて,秒速5kmもの超高速衝突の際に材料が破断的に破壊していく様子を原子レベルで観察することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
材料に衝撃的な力を加えると,スポール破壊に代表される破断・破砕的な破壊が生じる。このとき衝撃が与えられた場所とは異なる場所でしばしば深刻な破壊が生じ,例えば構造物の内部にはより甚大な被害が生じることが知られている。このような超高速の破壊現象はその超高速性ゆえにミクロな知見を直接得ることは困難だった。
従来は,実験後の試料の断面の破壊損傷痕を観察することで,破壊の開始や進展のメカニズムを推量する研究が行なわれてきた。しかし,動的な応力下における破断強度は構造体に用いられる材料の重要な特性のひとつにもかかわらず,超高速域の定量的なデータはほとんど得られていなかった。
研究グループはパワーレーザーショック超高圧法とSACLAを用いたX線回折イメージングによって,超高速破壊現象をフェムト秒の時間分解能でかつ原子レベルで直接観察することに成功し,材料の結晶構造中にサブミクロンレベルの亀裂が急激に集中して発生することで,高速衝突に特有の破断破壊に至ることを明らかにした。
この成果は,超高速衝突時の動的な破壊の開始や進展をミクロな視点で観察できることを実証したもので,宇宙ステーションや航空機などの安全性向上や新高耐力材料の開発促進につながるなど,人と社会の安心と安全に資する重大な研究成果だとしている。