光融合技術協会は5月9日,ドイツ・フラウンホーファーFEPと合同で,フレキシブル有機エレクトロニクスと光学膜などに関するセミナーを開催した。
光融合技術協会は宇都宮大学が中心となり,光技術・産業振興を図るため,産学官連携による情報共有や研究・開発に取り組むことを目的に,2017年1月19日に発足した一般社団法人。
今回,欧州のフレキシブル有機エレクトロニクスや光学薄膜技術の開発で中心的な役割を担っているフラウンホーファーFEPの研究者を招き,最新の技術動向を紹介する講演会を開催した。
まず,基調講演として宇都宮大学・教授で光融合技術協会・代表理事の谷田貝豊彦氏が,「オプティクス関連の市場と技術の世界動向」をテーマに講演を行なった。
国内の光産業市場の現状や技術開発のロードマップを示したうえで,今後,特に進展が期待されるものとしてSTRUCTURAL PHOTONICSという波長以下の構造の利用や制御,計測の研究開発分野を挙げた。
続いて,自動運転自動車の開発・事業化に関するテーマに,東京大学生産技術研究所・教授で,次世代モビリティ研究センター・センター長の須田義大氏が講演を行なった。自動運転自動車の研究・開発は国内外で活発化しており,実用化に伴う法整備なども進んでいる。
しかし,自動運転の実現には技術的な課題も多いという。特に利害得失がある現状のセンサーの問題を指摘し,高性能なセンサーの開発が今後は重要となるとした。
一方で,電波や光通信技術によるインフラ側での自動運転制御技術の開発も進んでいるが,インフラ依存では適用範囲が限定されるほか,サイバーセキュリティーの問題もあるとしている。
講演会はその後,フラウンホーファーFEPの研究者による講演に移り,まず,有機EL部門長のChristian May氏が登壇し,フレキシブルOLED開発の最新動向を述べた。想定しているアプリケーションは主に車載用照明としている。開発しているOLEDは低分子材料を採用しているという。
また,副所長兼R2R部門長のNicolas Schiller氏がRoll to Roll装置の開発動向を紹介。マーケティング部長のJoerg Koch氏が超高ガスバリア用WVTR測定技術を,最後に光学膜成膜部門長のDaniel Gloess氏がバリアと精密光学の高度なプロセス制御技術をテーマに講演を行なった。
講演会の終了後,場所を移し,今回紹介されたフラウンホーファーFEPの成果を発表するポスターディスカッションが行なわれ,講演者と聴講者との間で議論が交わされた。
今回のセミナーを主催した光融合技術協会は今後もその活動を活発化させるとし,2017年7月27日,28日の2日間にわたり,光学薄膜実務セミナーを,2017年8月27日から欧州研究機関見学会をそれぞれ実施する。また,研究開発プログラムを設定し,企業との共同研究もスタートさせる計画だ。