筑波大学と量子科学技術研究開発機構,住友電気工業,米ハーバード大学,独ウルム大学,米プリンストン大学,米カリフォルニア大学バークレー校などのグループとの共同研究により,室温での離散的時間結晶の生成を実験により実証することに成功した(ニュースリリース)。
液体から結晶への相変化のように,3次元空間の並進対称性の破れは,物性分野で既に知られているのに対して,時間並進対称性の破れは,その存在が理論的に予測されるにとどまっていた。
研究では,ダイヤモンド結晶中の強い相互作用と不規則性とをあわせもつ,約100万個の量子電子スピン集団を用いて,室温での離散的時間結晶の生成の観測に成功した。
この試料は,研究グループが開発した高温電子線照射技術によって作製されたもので,ダイヤモンド結晶中のNVセンターを平均距離5nmという世界最高濃度で含んでいる。
このような,時間並進対称性を破った離散的時間結晶という新しい相を,非平衡状態の量子系で実現できたことは,量子多体系のダイナミックス制御のマイルストーンとなる成果であり,量子コンピューティングの量子メモリや量子計測の高精度化への応用も期待されるものだとしている。