東大,静電による濡れ挙動の制御に成功

東京大学とスウェーデン王立工科大学の共同研究グループは,液体と固体表面の間に電圧を加えることで,粗さによって濡れの速度が遅くなる効果を消失できることを発見した(ニュースリリース)。

固体の表面を液体が濡らしていく現象は,自然や産業のあらゆるところで見られる。従来,固体の濡れ広がる速さは,表面の濡れ性(静的接触角)によって決まるとされてきたが,最近になって接触角が同等でも,表面のミクロ構造の粗さによって濡れ広がる速さが大きく低減させられることがわかっている。

実際の表面にはこのような粗さや静電(電荷やポテンシャル)が存在するため,その影響を理解し,制御することが課題となっている。

研究では,平滑面とミクロ構造を施した表面上にそれぞれ液滴を滴下して高速度カメラで観察すると,通常の場合は液滴の形や濡れ広がる速さが大きく異なるのに対して,一定以上の電圧を加えると,全く変わらなくなることがわかった。さらに,数値計算と組み合わせた解析によってその機構も明らかにした。

同じ素材であっても,表面の粗さや電場によって濡れ広がりを遅くしたり速くしたりできることは,印刷や微細構造作製に使われるインクジェット技術やディスプレーなどにおける光制御,生化学分析に使われるエレクトロウェッティング技術などの,制御性,信頼性,再現性の向上に貢献することが期待される。

この動的な濡れ挙動の制御はその他にも,コーティング,潤滑,半田付け,スプレー冷却,沸騰伝熱,焼結現象など多岐に渡る応用と関係する技術だとしている。

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