九州工業大学は米フロリダ州立大学,九州大学と共同で,ナノ複合化Y系超伝導材料における特有の原子スケール構造を世界で初めて解明した(ニュースリリース)。
30年前に発見された高温超伝導体は物性物理や物質科学の分野にインパクトを与え,その応用も急速に発展してきた。最初に日本人の手によって発見されたBi系超伝導体が実用化され,電力ケーブルなどに応用されてきた。
Y系超伝導体はそれを上回る特性をもつため,モーター,MRI,加速器などへの応用が大いに期待されている。Y系超伝導体の性能はナノ複合化によって飛躍的に向上したが,今までナノ複合化Y系超伝導材料の詳細な構造は不明だった。
今回,高分解能電子顕微鏡,X線回折放射光を使った原子局所構造解析,第一原理計算,有限要素法弾性計算を用いたマルチスケール構造解析を開発し,それにより世界で初めてナノ複合化Y系超伝導体の構造を明らかにした。
この成果はY系超伝導線材の特性向上に向けた材料設計につながる成果。さらに高温超伝導体だけでなく燃料電池や熱電変換材料等におけるナノ構造解明にも展開可能であり,ナノ材料科学にインパクトを与える成果だとしている。