近畿大学と東京大学の研究グループは,チリ共和国に設置された世界最高の性能を誇る巨大電波干渉計「アルマ望遠鏡」による観測で,暗黒矮小銀河(大変小さく暗い銀河)の冷たい塵が放つ微弱な光と考えられるシグナルを世界で初めて検出した(ニュースリリース)。
宇宙は未だに謎に満ちているが,研究が進むなかで理論と観測が合わない問題がいくつか生じている。その一つに「行方不明の矮小銀河問題」がある。矮小銀河とは,私たちの住む天の川銀河の約1000分の1以下の質量しかない小さな銀河のことだが,この問題は観測されている矮小銀河の数が理論予測より著しく少ないというもの。
その理由として,宇宙にはほとんど光って見えない暗黒矮小銀河がたくさん潜んでいるのではないかということが推測されている。暗黒矮小銀河とは,名前の通り大変暗い天体でその正体は謎に包まれている。その謎を解明するには,暗黒矮小銀河の放つ微弱な光を直接とらえるか,重力により近くを通る光の経路を曲げる「重力レンズ効果」を使って質量を測定するか,どちらかしかない。
研究グループは,地球から114億光年離れた重力レンズ天体をアルマ望遠鏡で観測した。その結果,観測対象の天体のすぐそばに,冷たい塵(小さな岩や氷の粒)によるものと考えられる微弱な電波を検出した。その場所に暗黒矮小銀河があると仮定すると,天体の観測結果に現れたいくつかの現象が説明できることが分かった。
この研究により,謎に満ちた暗黒矮小銀河の微弱な光を電波(サブミリ波)で観測するという新しい手法が有効であることが分かった。研究グループは,今後より高い解像度で観測を行ない,重力レンズ像のわずかな歪みから,暗黒矮小銀河までの距離や質量分布などを測定し,その正体の解明に向けた研究をさらに進めていくとしている。