日板ら,光学素子による小型DNA検査機を開発

著者: sugi


JST先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として,日本板硝子,産業技術総合研究所(産総研),およびゴーフォトンの共同開発チームは,「モバイル遺伝子検査機」(小型・軽量リアルタイムPCR装置)の開発に成功した(ニュースリリース)。

産総研は,遺伝子検査方法の中で最も普及しているPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応による標的DNAの増幅を経時的(リアルタイム)に測定し,その結果からDNAの定量を行なう)に着目した。

薄くて小さなプラスチック基板にマイクロ流路を作製し,そこに試料を注入して高温・低温の領域間で試料を高速に移動させることにより遺伝子を増幅させて蛍光で検出する原理を開発した。

一方で,日本板硝子は光通信などに使用されるSELFOC®マイクロレンズ(円筒状のガラスに屈折率の分布を付け,端面を平らに削るだけでレンズになる光学素子)の技術を利用した小型蛍光検出器を開発した。これは暗箱を必要とせず高感度で蛍光を測定できる検出器で,振動に強い特長を持つためモバイル遺伝子検査機のキーデバイス。

さらに,マイクロ流路内の試料を精度よく安定して移動させる方法を開発し,小型・軽量・高速のモバイル遺伝子検査機の試作機を完成させた。モバイル・高速ながら精度は従来の大型・高価格なPCR装置とほぼ同等で,価格は大幅に低減することができた。

さらに,産総研で高速に反応するPCR試薬を作製し,これを用いて試作機でPCR増幅テストを実施したところ,モバイル・高速でも従来のPCR装置とほぼ等しい性能が確認できた。

これまで専門施設に1日かけて送付し確定診断を待っていた遺伝子検査が,今回開発したモバイル遺伝子検査機により,適切な前処理と高速試薬の組み合わせで,専門施設外で迅速に行なえる。そのため,食品衛生,感染症予防,環境汚染調査など幅広い分野での活用が期待されるとする。

さらに,バッテリー駆動が可能で,ある程度の振動にも耐えられるため,移動中の救急車や航空機の中での使用に対応できれば,遺伝子検査機としての利用範囲の拡大が期待される。

今後の課題として,この装置の特長を最大限に生かすため,検査対象ごとに最適化された高速PCR試薬や前処理技術が必要であり,準備を進めているという。現在,試作機を研究機関,大学向けに試験的に供給し実地検証を開始しており,日本板硝子より年内の発売を目標に開発を進めていく。

キーワード:

関連記事

  • 新潟大,蛍光分光法で無花粉スギの簡易識別法を開発

    新潟大学の研究グループは,蛍光分光法を用いた無花粉スギの簡易識別技術を開発した(ニュースリリース)。 無花粉スギの花粉を飛ばさない性質は,雄性不稔遺伝子と呼ばれる1つの潜性遺伝子で決まる。そのため,両親から雄性不稔遺伝子…

    2025.10.01
  • 千葉大,光害が昆虫の体と寿命に影響することを解明

    千葉大学の研究グループは,都市部と非都市部に生息するオウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)を用いた実験により,都市部特有の夜間人工光(光害)が,体のサイズの縮小,睡眠時間の減少,活動リズムの乱れ…

    2025.08.28
  • 広島大ら,魚から発せられる光により鮮度を判定

    広島大学と宇和島プロジェクトは,生物が本来持っている蛍光(自家蛍光)を詳細に解析することにより,鮮魚の鮮度を非破壊的かつ定量的に評価できる可能性を調査し,少なくとも,トラウトサーモン,マダイ,ブリの3魚種に共通する蛍光成…

    2025.08.18
  • 科学大,粘度測定を実現する蛍光色素の設計指針確立

    東京科学大学の研究グループは,凝集誘起発光色素(AIE色素)の粘度応答性発光を実験と理論の両面から系統的に調査し,従来の分子ローターと呼ばれる蛍光粘度センサーよりも高感度な分子の設計指針を確立した(ニュースリリース)。 …

    2025.08.08
  • MKS,蛍光イメージング向けフィルターセットを発売

    米MKS Inc.は,蛍光イメージング向けに設計した「Newport ODiate 蛍光フィルターセット」を発表した(ニュースリリース)。 DAPI,TRITC,GFP,FITC,Texas Red,Cyanine (C…

    2025.06.26
  • 公大,紫外線照射で酵母の有用化合物生産能力を強化

    大阪公立大学の研究グループは,既存の酵母株に紫外線を数分間照射することで,D-乳酸の生産量が約1.5倍に増加した新規株の作出に成功した(ニュースリリース)。 現在,石油に代わる新しい炭素の材料として,メタノールのような物…

    2025.05.29
  • 芝浦工大ら,可視から赤外域に切替わる蛍光色素開発

    芝浦工業大学,早稲田大学,物質・材料研究機構は,可逆的な酸化還元反応によって可視(VIS)から近赤外(NIR)・短波赤外(SWIR)領域へと蛍光をスイッチできる有機色素材料の開発に成功した(ニュースリリース)。 有機蛍光…

    2025.05.21
  • 東大ら,力を色で可視化するウェアラブルセンサ開発

    東京大学と深圳先進技術研究院は,色の変化で力を可視化するウェアラブルセンサを開発した(ニュースリリース)。 力を可視化するメカノクロミック素材は色々あるが,定量的に力を読み取ることができるものは多くない。 研究グループは…

    2025.05.08

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア