浜松ホトニクスは,今後拡大が期待される赤外光応用市場に向けて化合物光半導体素子の生産能力を強化するため,都田製作所第3棟の建設に着工する(ニュースリリース)。新棟は2017年10月に竣工の予定。総工費は約40億円。
光半導体素子は一般的にシリコン(Si)を材料とするが,化合物光半導体素子は複数の材料を組み合わせて製造する。組み合わせる材料や比率を変えることで,シリコンが得意とする可視領域とは異なる光の領域,特に波長が長い赤外光領域に対応した光検出器(受光素子)や光源(発光素子)を実現できる。
赤外光は食品や大気,水質などの分析用途の他,レーザー加工などの産業用途でも利用が進んでおり,今後も医療やセキュリティなど多様な分野で応用市場が拡大すると期待されている。また,先進運転支援システムおよび自動運転システム向けの赤外光を用いた LIDAR(Light Detection And Ranging)は,急激に市場が拡大すると予想されている。
これらの応用市場では,用途に応じて受発光素子の性能を最適化する必要がある。同社は受光,発光の両素子を生産しており,用途に応じて最適な素子を開発,製造してセットで提案できるという強みがある。
同社は現在,複数の拠点で化合物光半導体素子を製造しているが,新棟に素子の性能を大きく左右する前工程(エピタキシャル成長,加工プロセス)を集約し,蓄積してきた独自の製造ノウハウを融合する。また,自動化の推進および最新の生産管理システム導入で生産性を高めて,全社の生産能力を2インチウエハ換算で月産1,000枚から月産2,000枚に増強する。