QSTら,変形した原子核のハサミ状振動の全体像を解明

量子科学技術研究開発機構(QST)は,日本原子力研究開発機構,米エネルギー省と共同で,ラグビーボール型に変形した原子核をもつタンタル原子核(Ta-181)の振動をガンマ線を透過させて高精度で観測することに成功し,これまで知られていなかった原子核のハサミ状振動の全体像を明らかにした(ニュースリリース)。

原子核は,構成する陽子や中性子の数やその比によって球形から歪んだ形をとり,例えばタンタルの同位体(Ta-181)などの原子核は,ラグビーボール型に変形している。

固そうに見える原子核は,「柔らかく形を変える」性質があり,これらの原子核では,陽子と中性子の塊がハサミの動きに似た周期的な振動をすることが知られていた。これまで30年近く,様々な実験や理論構築が試みられてきたが,この振動のメカニズムを解明して原子核の姿を統一的に理解するには至っていなかった。

そこで研究グループは,非常に強い透過力を持つ「ガンマ線」をエネルギーを自在に変えて発生できる「レーザー・コンプトン散乱ガンマ線」を用いた「透過法」によりTa-181の原子核を詳しく調べた。

その結果,Ta-181原子核におけるハサミ状振動が従来の測定結果の約2倍強く,さらに,エネルギーの異なる複数のガンマ線放出を伴う原子核振動の減衰プロセスが存在することを初めて突き止めた。

この結果は,従来提唱されていた振動の減衰プロセスとは大きく異なるもので,原子核そのものの動き方についての理解を大きく塗り変えるもの。この手法で様々な原子核を観察し変形核の振動や回転といった挙動を明らかにすることにより,原子核の姿といった核物理学の根本的な理解につながることが期待できるという。

さらに,ウランやプルトニウムなど核セキュリティ上重要な物質ではハサミ状振動が非常に強く現れることから,今回見いだした振動の減衰時に放出されるガンマ線を測定することで,核物質の非破壊検知に役立つ可能性もあるとしている。

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