阪大ら,2光子衝突による電子・陽電子対生成を発見

大阪大学とカリフォルニア大学は,高強度レーザーがプラズマ中を伝播する過程で,レーザーエネルギーをガンマ線など光子に変換し,2光子衝突による電子・陽電子対生成を起こし,陽電子ビームが得られることを,世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

光子からの電子・陽電子対生成は,BreitとWheelerによって1934年に理論的に予言された。2つの光子が衝突し対生成を起こす線形Breit-Wheeler過程では,電子・陽電子対生成の確率は非常に小さく,大量のガンマ線光子を衝突させる必要がある。そのため,観測に足る陽電子を発生させることが困難であり,これまで実験的に証明されていなかった。

研究グループは,高強度レーザーがプラズマ中を伝播する過程で,線形Breit-Wheeler過程による電子・陽電子対生成が起こること,さらに発生した陽電子が指向性の強いビームとして飛び出す特性を持つことを理論・シミュレーション研究によりに明らかにした。

高強度レーザーを照射すると物質は瞬時に電離しプラズマ状態となる。レーザー光は生成されたプラズマ中を伝播し,プラズマ中の電子をレーザー伝播方向に高エネルギーに加速する。

現在,電場振幅が100MV/ミクロンにのぼる高強度レーザーが利用可能となってきており,その場合,電子は10ミクロン程度の加速長でギガ電子ボルト(GeV)のエネルギーに加速され,前方にガンマ線を放出する。

一方,プラズマ中のイオンは電子より重く電子に追随できないため,レーザー伝播の先端に荷電分離による電場が形成される。この電場は電子の一部を引き戻し,その結果後方にX線が放出される。このように,レーザー光がプラズマ中を伝播する際,多数のガンマ線光子とX線光子が正面衝突をする構造が自己生成されることが明らかになった。

その結果,2光子衝突による電子・陽電子対生成がプラズマ中で効率的に起こり,さらに発生した陽電子は荷電分離電場に加速されて指向性の強いビームとして飛び出すことがわかった。シミュレーションにより解明されたこの機構が効率的に起こるための条件を理論的に導き,高強度レーザーを用いた線形Breit-Wheeler過程実証への道筋を提示した。

研究グループは,光子衝突による電子・陽電子対生成が実験的に実証されれば,宇宙における物質創生の基礎過程を実証する道筋が確立され,光から物質を作り出す様々な過程を検証できるとしている。

また,発生する高エネルギー陽電子が指向性の強いビーム状で発生することから,バイオ技術や物性研究での陽電子を用いた応用研究の発展も期待されるとしている。

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