凸版,バイオミメティクスによる発色シートを開発

凸版印刷は,光の反射と散乱を制御するナノ構造設計技術と多層薄膜形成技術の融合によって,顔料や染料などの色素を使わずに,色を示す構造発色シート「モルフォシート」を開発した(ニュースリリース)。

生物の持つ優れた機能や原理を模倣する技術分野であるバイオミメティクスは,国内外の大学や研究機関だけでなく民間企業でも研究が行なわれている。特に,日本においては,玉虫,モルフォチョウ,カワセミ,孔雀など生物の織り成す構造色が好まれ,これら構造色の再現は長年にわたり研究されている。

今回,同社はモルフォチョウの瑠璃色を表現する構造に着目し,コア技術であるナノ構造設計技術と多層薄膜形成技術を活用することにより,その瑠璃色を忠実に再現することに成功した。

構造や多層薄膜による物理的相互作用で発色するため,顔料や染料を使用した従来のものと比較して,太陽光や蛍光灯などの紫外線による褪色がなく,鮮やかな色が長持ちする。

開発したシートは,ナノインプリント技術により形成したナノ構造上に金属薄膜を多層に成膜することで,光の反射と散乱を制御し,ナノ構造と多層薄膜によって色を表現することが可能となる。

ナノ構造の形状とサイズ,およびランダムパターン配置の設計によって,表現する色と視野範囲を自由にコントロール。広い視野角を実現した。ナノ構造上に多層薄膜を精密形成することができるため,反射吸収する波長域を狭めることができる。これにより発色の均一性を高めることができる。

同社は偽造防止やブランドプロテクションなどのセキュリティ商品や屋内外でのプロモーションツール向けの製品として,2017年度中の実用化を目指す。また,バイオミメティクスを活用した技術開発を進め,多彩な機能を持つ製品などに幅広く展開していくとしている。

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