KDDI総合研究所と住友電気工業は,光ファイバー1芯で伝送することができる伝送容量の世界記録(2.15Pb/s)を大幅に更新し,世界最大となる10.16Pb/sの光ファイバー伝送実験に成功した(ニュースリリース)。
これは114の空間多重を可能とするマルチコアマルチモード光ファイバー技術を用いたもの。伝送容量10Pb/sは,1秒でブルーレイディスク2.5万枚分(50GB/両面)のデータを伝送できるスピードであり,また,1億人が同時に100Mb/sの通信を可能とするスピード。
5G以降の時代には,無線技術だけでなく,それを支えるネットワーク技術や光ファイバー伝送技術の革新が不可欠となる。この技術は,より低遅延で高速な5G以降のモバイル通信システムを支えるキー技術として期待できるもの。
従来の光ファイバー(単一コア,単一モードファイバー)通信では,光信号を波長軸上に複数「波長多重」することにより伝送容量を拡大してきたが,入力できる光パワーの限界や光ファイバー中での信号間の干渉などにより,実質的な伝送容量は約0.1Pb/sが限界と言われている。
近年,その限界を打破する技術として,光ファイバーの中に複数のコアを設けるマルチコアファイバーや複数の伝搬モードを活用するマルチモードファイバーに代表される「空間多重」技術が世界的に進展し,これまで22の空間多重が可能な 22コアファイバーを用いて,2.15Pb/sまでの容量拡大が報告されていた。
これまで空間多重数が100を超えるマルチコアマルチモード光ファイバーも開発されてきたが,伝送容量は2Pb/sが最大だった。しかし,単一コアファイバーの最大伝送容量×空間多重数(100以上)からは10Pb/sの可能性があると考えられる。
そこで,今回,実際に10Pb伝送を評価するための信号を用意し,全チャネルを効率的に評価する手法を導入して伝
送特性を評価することで,伝送容量10.16Pb/s(伝送距離 11.3km)を達成した。
この研究によりマルチコアマルチモード光ファイバーを用いた10Pb超の超大容量光通信システムの実現可能性を示した。今後は,マルチコアファイバーやマルチモードファイバーの適用領域を見極めながら,5Gを含め将来の多様で大容量なデータ通信需要に対応すべく光ファイバー伝送基盤技術を発展させる。