NTT,最高性能の8Kリアルタイムエンコーダを開発

日本電信電話(NTT)は,8K映像サービスを実現するためのキーとなる,専用LSIによる世界最高性能の高画質8K HEVCリアルタイムエンコーダを開発した(ニュースリリース)。

同社は最新の映像符号化国際標準規格「H.265/HEVC」(HEVC)に対応した専用LSIである4K/60p映像対応HEVCリアルタイムエンコーダLSI「NARA」を2015年3月に発表した。今回,同LSI 4チップを連携動作させ,チップ間で相互データ転送を行なうことにより,高画質・高効率な8K/60p映像対応HEVCリアルタイムエンコーダを実現する技術を新たに開発した。

この8Kエンコーダにより約85Mb/sで8K映像伝送が実現可能となった。また8Kエンコード処理が1ボードで経済的に実現可能となり,パブリックビューイング,ODS等の8K映像配信サービスや8K放送の実現加速,監視・医療分野での新たな高臨場映像アプリケーション創出に貢献するとしている。

今回,8Kエンコーダを実現する技術のポイントは以下のとおり。

(1)チップ間相互データ転送により高効率・高画質な符号化を実現
今回,7680画素×4320画素の8K映像を4つの画像に分割し,それぞれを4K映像相当の処理能力を持つHEVCエンコーダLSIで並列にエンコードする。映像符号化方式では映像の動きに追従して符号化済みの画像との差分をとることによって情報量の削減を図っているが,この技術では,4チップ間で参照画像を相互に転送し,分割境界を跨ぐ動きに対応したエンコード処理を実現。これにより分割による符号化効率の低下を生じさせることなく,高い符号化効率を実現した。

また,分割境界を跨ぐ平滑化フィルタ処理,分割画像間の画質を均一化する符号量制御処理をいずれもチップ間のデータ転送によって実現し,高い符号化効率と高画質を実現した。これらにより従来のH.264では200~160Mb/sのビットレートが必要であった高画質な8K映像の伝送を約85Mb/sで可能とした。

これまで,4K対応のエンコーダLSIを並列動作させ8K映像のリアルタイムエンコードを実現した例はあったが,チップ間の相互データ転送を伴わないため,符号化効率や画質の面で十分とはいえなかった。

また,8K映像をFPGAベースの複数のエンコーダボードで相互にデータ転送をしつつエンコードを行なう技術があったが,今回,より高い処理能力を持つ4K対応の専用LSIを用いることにより,より高画質・高効率なエンコード処理を実現した。また,高速・広帯域のチップ間転送を実現するために汎用のPCIeバスを採用することで,経済的かつ柔軟な実装を実現している。

(2)8K映像エンコーダの小型化・経済化を実現
このエンコーダでは,従来複数のエンコーダボードで実現されていた8K映像のリアルタイムエンコード処理を,HEVCエンコーダLSI 4チップと周辺回路を搭載した1ボードで実現している。装置サイズとしては,入力映像信号のインタフェースボード等を含めても,19インチ幅ラックで5U(222mm高)程度での実装が可能となり,従来に比べ大幅な小型化・経済化を実現した。

同社はこの8Kエンコーダを用いて,パブリックビューイング,ODS等の超高精細8K映像配信サービスや医療用途での実証実験を進めていく予定。また,2020年には,世界各地で多くの視聴者にスポーツの感動が共有されることが予想されている。この技術を活用した様々な高臨場高精細映像サービスの実現に今後貢献していくとしている。

なお,この技術に関してはNTTエレクトロニクスより8Kエンコーダモジュールとして製品化を予定しているという。

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