光技術者として日々の研究にいそしむ著者が,これまでの経験や日常を通じて感じる光に関するあれこれを,肩ひじ張らずに綴る人気のコラム。その飄々としたキャラクターも魅力の一つです。

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虹の難易度

不精な僕にとっては,我が家のささやかな庭の手入れだって持て余し気味だけれども,朝夕の水撒きはほぼ欠かさない。庭の草花に対する気遣いというよりは,僕の目的は虹を見ることだ。晴れた日の朝夕に散水ノズルからシャワーを飛ばせば, […]

すでにマトリックス

いまや電車に乗って席を見渡せば,座っている人たちはみんな同じような姿勢でスマホのディスプレイを眺め,指を動かしている。老若男女問わず,その割合は十中八九といっても過言ではないだろう。スマホが普及していなかった頃の車内の様 […]

虹色の雲─彩雲か幻日か─

夏の盛りに,北アルプス後立山連峰の盟主,鹿島槍ヶ岳に登ってきた。数日前からの天気予報では雨で登山指数C(登山不適)ということだったけれども,すでに予定を入れていたので,景色を半ば諦めながらも,とりあえず行ってみることにし […]

罪作りなメタマテリアル

光屋であれば,「メタマテリアル」という言葉をよく目にするだろう。光のメタマテリアルとは,“光の波長よりも小さなサイズの構造体で,自然界には存在しない光特性を示す人工物”である。通常,物質の光に対する特性は,その物質を構成 […]

光学と楽観主義

光学のことを英語では「オプティクス(optics)」という。そして,「オプト(opto-)」とか「オプティカル(optical-)」に関連する光に関わる言葉が多く使われている。例えば,「optoelectronics(光 […]

宇宙戦争─熱線の謎─

火星に生命,あるいはその痕跡があるかどうかということは,僕たち人類にとっての大きな関心事の一つである。火星の過酷な環境を考えると,高等な生命体が存在する確率は低いけれども,何らかの有機体が存在する可能性は十分にあるらしい […]

動体視力という視力

テニスのトッププロの試合では,打ち合いのストロークの速度が時速100 Kmを軽く超え,サーブに至っては時速200 Kmを超える速度で放たれる。そんな打球がライン付近でバウンドすると,訓練されたラインズマンでさえもセーフな […]

何かに見えるということ─パレイドリア─

子供の頃に住んでいた家では,夜になるとトイレの前の壁に,2 つの吊り上がった目と不気味な口が開く顔が現れた。それは,おそらく窓の外から射し込んだ街灯の光やその影が作り出した造形だったと思うのだけれども,僕はそれが怖くて, […]

にんじんケーキの彩りの謎

妻はにんじんケーキを偏愛している。毎週のようにケーキを焼き,毎朝ひと切ずつ食べていく。よくも飽きないものだと,僕は感心してしまう。にんじんケーキは,すりおろした人参に小麦粉,重曹,シナモンなどのスパイスを混ぜ合わせて焼い […]

油の虹は雨上がりに現れる

雨上がりに散歩をしていたら,道路の表面に虹色模様が広がっていた。車から漏れた油が膜になっているのだろう。濡れて黒ずんだ道路にアメーバのようにへばりつく虹はなんだか毒々しくて,僕はそれを「汚いもの」と感じてしまう。 でも, […]