名大ら,超流動ヘリウム中の流れの可視化に一歩

名古屋大学,日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)による共同プロジェクト(J-PARC),中性子科学センター(CROSS),京都大学の研究グループは,可搬型の小型計測装置を開発し,超流動4Heに中性子ビームを照射することによって生成された4He2エキシマーからの発光現象の確認に成功した(ニュースリリース)。

乱流の理解を深めるために,超流動ヘリウムやボース・アインシュタイン凝縮などの超流動体に存在する量子乱流の分野に関心が高まっている。

特に超流動ヘリウムはそれ自体が冷媒として使われるため,流れの理解は重要となる。これまで凍結水素や高分子化合物から作られた微粒子トレーサーを用いて超流動ヘリウムの流れを可視化し,流速の測定が行なわれてきたが,これらは量子渦よりもかなり大きなサイズの粒子であるため渦の動きを乱してしまい,超流動ヘリウム自体の流れを正確に解釈することができない。

4He2エキシマーは,こうした問題を軽減する可能性のあるトレーサー。液体ヘリウムのほとんどを占める4Heは,通常,単原子分子として存在するが,強い電場や放射線のような外部からの刺激により励起し,4He2エキシマーと呼ばれる2原子分子を形成する。4He2エキシマー状態の寿命は約13秒であるため,その間に特定の波長のレーザーを照射することで蛍光を見ることができる。

研究グループでは,中性子を照射することで生成される4He2エキシマー集団をトレーサーとして超流動4He中の流れを完全可視化するプロジェクトを推進している。

この研究では,まず4He2エキシマー蛍光を誘起するための非常に小型で高強度のTi:Sapphireパルスレーザーの開発等により,中性子施設のように制限された環境で使用できる可搬型の計測装置を実現した。

それを用い,J-PARCのパルス中性子ビームや京都大学研究用原子炉の連続中性子ビームを超流動ヘリウムに入射し,パルスレーザーを同時に照射することで生じる蛍光を測定した。

得られた蛍光はフィルターで関係のない光を取りのぞいた上で微弱光を検出できる装置で測定され,データに合わせて開発したアルゴリズムを用いて雑音除去を行ない,パルスレーザー後の発光確率を導出することで,蛍光が4He2エキシマーによるものであることを同定している。

中性子が液体ヘリウム中に微量に存在する3Heと反応し,荷電粒子を放出して4Heに刺激を与えるほか,ビーム由来のガンマ線によって4Heが励起し,4He2エキシマーは形成される。

今後,3He由来の4He2エキシマーを増やすよう調整することで超流動ヘリウム中の流れを可視化できるようになると期待されるという。またこの研究で実証された計測装置の開発は,超流動4He中の流れの完全可視化にむけた第一歩になる成果としている。

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