東北大,核スピン共鳴プローブ顕微鏡を開発

東北大学の研究グループは,走査プローブ顕微鏡に核スピン共鳴技術を組み合わせた「核スピン共鳴プローブ顕微鏡」を開発し,髪の毛の細さの1万分の1の厚み,10分の1以下の幅に存在するスピン状態のMRI(核磁気共鳴イメージング)に成功した(ニュースリリース)。

MRI(核磁気共鳴イメージング)は,医療分野で病気の画像診断に広く用いられている。小さな病気を発見するためにはMRIを細かい画素で表示する必要があるが,画素の間隔が髪の毛よりも細い数十マイクロメートル以下となるような高分解能診断は難しい。

一方,量子構造を持つ半導体デバイスにおいても,MRIの根幹技術である核スピン共鳴が,量子構造のスピン状態を調べるための強力な手段として用いられている。しかし,MRIを半導体デバイスのようなナノからミクロンスケールに閉じ込められた構造に用いる場合は,前述の分解能の問題に加え,半導体中に埋め込まれた量子構造からの核スピン共鳴信号をどのように抽出するかが問題となる。

研究では,走査プローブ顕微鏡に核スピン共鳴技術を組み合わせた「核スピン共鳴プローブ顕微鏡」を開発し,半導体量子構造中にある原子核スピンの共鳴信号をミクロスコピックにとらえることに成功した。

開発した顕微鏡のデモンストレーションは,半導体構造に閉じ込められた電子に強い磁場をかけることで生じる量子ホール状態を利用して行なった。核スピン共鳴信号の強度とナイトシフトと呼ばれる共鳴周波数のずれをマッピングすることにより,核スピン偏極領域と電子スピン偏極度の空間変化を明瞭に映し出すことに成功した。

この研究成果は,量子構造における電子・原子核スピンの分布を明瞭に映し出す新しい技術を提供するものであり,今後,様々な量子構造のスピン状態,量子デバイスのMRI診断への応用が期待されることから,核スピンを用いたスピントロニクス分野の促進につながるとしている。

その他関連ニュース

  • 阪大ら,凍結生体の分子を高感度観察する顕微鏡開発 2024年12月12日
  • 農工大,光学顕微鏡で非接触に高分子濃度の分布測定 2024年12月12日
  • 日立ハイテクら,高分解能Laser-PEEMを半導体応用
    日立ハイテクら,高分解能Laser-PEEMを半導体応用 2024年11月12日
  • 宮崎大,光顕用パラフィン切片で電顕解析を可能に 2024年10月11日
  • 東大ら,世界最高速の蛍光寿命顕微鏡を開発 2024年09月05日
  • 新潟大,超解像顕微鏡でアクチン細胞骨格を3D撮影 2024年07月19日
  • 順天堂大ら,安価なDIY光シート顕微鏡システム開発 2024年07月02日
  • 東大ら,XFELで生体観察できる軟X線顕微鏡を開発 2024年05月24日