トリマティスは,水中探査向けにTOF(Time of Flight)方式のLiDARシステムのデモ機を開発した。
同社は,独自の基盤技術である高速光デバイス技術と高速制御回路技術に強みを持ち,両者を組み合わせたサブナノ秒オーダーの技術で製品展開を図っている。同社がターゲットとしている市場は光通信,センサー・産業機器・測定器,医療機器だが,自動車分野などにおけるセンサー市場に注目し,LiDARシステムの開発を進めている。今回開発したデモ機はAUV(自立型無人潜水機)やロボットへの搭載を想定しているもので,水中におけるレーザー伝搬実験システムとなっている。
デモ機は,水中で透過性の高い青色レーザーを用いたLiDARシステムキットと,注水された3.38 mまで拡張可能な円筒で構成されている。キットには,同社が開発した150 Aのピーク電流で短パルス駆動が可能なLDドライバを搭載し,パルス幅は30 ns。同社によれば,大電流で短パルス駆動という特性が,レーザーを用いた距離測定を行なうLiDARシステムの高性能化に期待できるとしている。
同社では今回開発したデモ機を通じ,各種デバイス性能の評価を行なうとともに,水中での実験データの取得を進めるという。また,ロボットへの搭載に向けては,千葉工業大学・青木岳史氏と共同で研究・開発も進めており,この10月に幕張メッセで開催されたインターオプトにおいてLiDARシステムキットを搭載した自走式ロボットの動態展示を行なった。
同社における水中探査向けやロボット搭載向けLiDARシステムの開発はスタートを切ったところだが,同社・代表取締役CEOの島田雄史氏は「特に水中向けでは水質によってレーザーの透過性が変化するため,青色レーザー以外の波長の異なる光源でも実験を進める」としている。いずれにしても今後の同社のLiDARシステム開発動向が注目される。なお,今回開発したデモ機は11月14日から開催される「光とレーザーの科学技術フェア」にも出展する予定だ。◇
(月刊OPTRONICS 2017年11月号掲載)