3月半ば頃,英国大衆紙・デイリーメールのウェブ版に,効率の良い常温核融合が実現されたとの記事が出ていました。相前後して米国・コロラド州立大のホームページにも同じ内容の記事がアップされ,また本年7月になってPhotonics Spectraでもこの件が取り上げられています。重水素Dに置換されたポリエチレンのナノコラム(林立している)に1 J程度のfsレーザーパルスを照射したところD-D核融合反応が生じて超短中性子バーストが観測された,と云うものです。1 Jの入力に対して200万個の中性子が発生したとのことで,平板型ターゲットの場合に比べナノコラム型とすることで500倍の発生効率が得られたそうです。
照射エネルギーをさらに増大することで重水素のエネルギーはより大きくできて,D-D反応もさらに高められる可能性があると書かれています。また,この報告の様な小型装置でも,超高速中性子分光や,D-D反応のより詳しい理解に役立つだろうとのことです。常温核融合は,1989年,英国と米国の研究者が,特殊な電極を用いて重水中に電流を流すと過剰に発熱し,核融合が起こった可能性があると発表したことに端を発しています。残念ながら再現性がほとんどなく,長らく似非科学とも見なされていました。しかし我が国を含め幾つかのグループが粘り強く研究を継続し,ここ数年,再び報道に取り上げられるなど,注目を集め始めています。
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