冬になって太陽の角度が低くなったから,陽射しや影が長く伸びている。先日,電車に乗ったら,僕の向かいの座席の無いスペースの壁に,窓の形の明るい陽射しが投影され,そしてその中には座っている僕の影が映っていた。
少し体を斜めにして窓枠の影に僕の頭の影を近づけると,窓枠の影と僕の頭の影の一番近いところが,まるで引っ張り合いをしているように伸びた。他に乗客がいないことを幸いに,僕は嬉しくなって何度も影の引っ張り合いを楽しんでいた。目的地に到着し,僕は「これこそ後ろ髪を引かれる思いだな」などと頭の中でオヤジギャグを考えながら電車を降りたのだった。
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