「みんなのうた」というNHKのテレビ番組が放送開始から60年を超えたらしい。日本人であれば,この番組で放送された曲のいずれかが記憶のどこかに残っているだろう。
僕は「風と光と(スキーの歌)」という曲が忘れられない。「私が風になる日がある/あなたが光になる日がある」という歌詞(西澤実作詞)で軽快に始まる曲は,「スキーがまあるい空を飛ぶ/その時私は風に/あなたは光になるなるなる」という歌詞でクライマックスを迎える。ちょうどこの歌が放送された頃にスキーを始めた僕にとって,雪の上でのワクワク感や,きらきらと光る粉雪を舞い上げながら颯爽と滑る大人たちへの憧れと重なって,スキーの原風景とも言える記憶になっているのだ。
「私が風になって」いい気分になっている目の前で,「あなたは光になって」一瞬のうちに視界から消えてしまう。私は置いてけぼりにされたのだ。ああ何と寂しいことだろう。などと,ずいぶんひねくれたことを考えたのは,後年になって光についての生半可な知識を身につけた頃のことだ。
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