家のトイレの窓際に,透明な小瓶に挿した一輪の赤い薔薇が咲いていた。北側窓から差し込む柔らかい光を受けて,まるで微笑みかけてくるように佇むその薔薇に,僕はつい見惚れてしまった。
薔薇の花は,先端がくるっと外側にカールしている花びらが幾重にも重なっている。外に向かっては物言いたげに開いているけれども,花芯はしっかりと包み隠している。人生を経験しながらも奥ゆかしさを忘れていない,上質な大人の雰囲気というのだろうか。
赤い薔薇には,発色にも深みのある神秘的な気配を感じる。よく観察してみると,花びらはビロードのようなグラデーションを発していることがわかる。
続きを読む
この続きをお読みになりたい方は
以下のバナー下フォームからログイン・または登録をお願いします。
この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。