4.4 健康,ライフサイエンス
ヘルスケア,ライフサイエンス向けの応用はいまだに未成熟ではあるものの,最も潜在性が高いという見方もある。ポイントオブケア診断の普及に伴い,一気に大規模な採用が進む可能性がある。
デバイスの小型化,簡素化へ向けたトレンドから,生体サンプルのイメージング,分析ソリューションを代替,補完する技術としてCL技術への関心が高まっている。多くの応用が登場し,研究される中で,CL光源は小型化,簡素化に最も適した実現技術とされている。
例えば,CLベースのTLASは中赤外線FTIRと比較されてきたが,Bruker Optics社とハーバード大学の比較実験の結果,そのパフォーマンスではTLASに軍配が上がった。またハイデルブルグ大学でも,生体組織のハイパースペクトルイメージングで,QCL技術とBrukerのFTIRイメージング装置との比較を行っている。
Daylight Solutions社は,セントラルランカシャー大学,ストラスクライド大学と提携し,量子カスケードレーザーをベースとする中赤外線分光イメージング装置を開発している。
4.5 自動車,運輸
都市及びその周辺における煤煙や排気ガスへの懸念が高まっている。大気汚染物質は,呼吸器あるいは循環器の疾患の原因とも考えられている。粒子状物質の大気中の質量濃度を制限する議案が欧州,北米で承認された。実際上の規制対象は自動車の排気ガス,特にディーゼルである。
海運,空運も同じく大気汚染の源として懸念の対象となっている。海上運輸の排ガスは,大気汚染物質のうち,窒素酸化物の15%,温室効果ガスの3−6%,硫黄酸化物の3−7%を占めると言われている。航空各社も,燃費向上に取り組むと同時に,排気ガス成分についても改善を進めようとしている。
CL分光システムはこうした用途に最適のソリューションとなりうる。下記のように,バリューチェーンの様々な段階でCL技術の有効活用の可能性がある。
・運行中の排気ガス管理
CL技術の自動車,運輸向け応用には大きな市場機会があると考えられる。
・製造プロセス管理の大量生産向け応用