量子カスケードレーザー市場
2020年には5億6700万ドルに

6. 市場予測

図3 量子カスケードレーザーの世界市場(2015年−2020年)(出典:Tematys & Arcles)
図3 量子カスケードレーザーの世界市場(2015年−2020年)(出典:Tematys & Arcles)

ここでは,既存,新興のアプリケーションを対象に,量子カスケードレーザーの市場を定量化してみたい。Tematysでは,カスケードレーザーを利用する側の製造業者に対して,QCL製品への切り替え状況,利用率に関して調査を行った。次に,この利用側への調査結果を,QCLメーカーへのインタビュー,QCLメーカーによる調査結果と照らし合わせて,最終的な予測を導き出した。

Tematysの予測によると,QCLシステム市場は2015年の2億米ドル規模から,複合年間成長率24%で成長し,2020年には5億6700万米ドル規模に達すると見られている。

QCL技術は,産業用,環境,自動車,ヘルスケアなど様々な分野で用いられる。用途としては,分析,分光法が最も大きなシェアとなる。

分野別にみると,産業用の市場規模が最も大きい。生産ライン上,あるいはライン間におけるモニタリング,分析のニーズが高いからである。

自動車向け分野では,今後5年間の複合年間成長率が26%と,かなりの成長が期待されている。燃費管理,特に一部で問題となった排ガス規制がこの成長の追い風となる。自動車市場では安価で信頼性の高い排気成分の分析装置が必要とされている。

医療,ヘルスケア市場の成長率は自動車向けよりもさらに高くなるだろう。しかしながら,いくつかの不確定要素も存在する。

まずはPOC診断である。この応用市場が順調に成長すればCLの医療向け市場は爆発的なのびを見せるだろう。しかし,その普及が一体いつ起こるのか予測することは難しい。

もう一つの不確定要素は中赤外線光源としてのCLコンポーネントのシェアである。QCLはいまだに高価である。一方で,コスト的には有利なICLや,他の光源もこのマーケットでシェアを伸ばそうとしている。最終的には各技術の優位性や弱点に従って,それぞれが細分化された市場で立場を確立してゆくだろう。

セキュリティ,防衛分野も興味深い動きを見せると思われる。現在では,QCLは高価でかさばるOPOの代替技術として,IRCM向けに導入されている。将来的には,この技術がより広く採用されると予測されている。

7. 結論

カスケードレーザーは中赤外線領域において最も有望な技術である。ガス分析や軍事用IRCMなど,既に有効性が確立されたアプリケーションがある一方で,新しい応用を求めて様々な研究開発が進められている。しかしながら,中赤外線領域をターゲットとするその他の技術との競合も激しく,それぞれのアプリケーションで最終的にどの技術が採用されるかはいまだ不透明である。

ツネオカ リエ

株式会社グローバルインフォメーション
マーケティング部 部長

(月刊OPTRONICS 2016年6月号掲載)

このレポートは,㈱グローバルインフォメーションが扱う各国の市場調査会社の報告書をもとに執筆したものです。豊富な資料を揃えていますので,より詳細なデータや関連データだけでなく,その他にもお探しのデータがある場合,同社までお問い合わせください。
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