光の力でデブリを捉え,クリーンな衛星軌道を目指す

―衛星自体の大きさとはどのくらいですか?

我々が単独でサービスをする場合,レーザー以外のコンポーネントも含めて50kgぐらいでペイロードが成立すると思うので,衛星自体としては150kgとか最大でも200kgくらいの小型衛星で収まると思います。ただ,別のデブリ除去事業者が大きいデブリを落とすために,我々の回転を止めるレーザーを入れたいとなったら,その50kgに加えて,例えばデブリを捕まえる装置のベイロードや燃料タンクなども必要ですので,衛星はもっと大型になります。

―先日アストロスケールがJAXAとデブリ除去実証の契約を締結しましたが,これをどうご覧になっていますか?

日本にとっては非常に大きい一歩だと思います。今回の対象が特定のロケット上段ですので,彼らが実証できればそれは素晴らしいことだと思っています。おそらくこのロケット上段はそこまで大きな振動や回転をしていないと思いますが,全てのデブリが静止しているわけではないので,今後は難しい事例が出てくるはずです。その時に我々の技術を使ってもらうことで,競合というよりは協業ができるんじゃないかと思っています。

―デブリビジネスに参入しようという動きは活発化していますか?

多くの国でそういうプログラムが実際にいくつか立って上がっています。ただ,こうした多くは国がお金を出すプログラムであったりするので,基本的にはサービスの対象が国内の事業者に限られます。回転を止めるペイロードという面では,我々はそういった制約無しにペイロードを売ることができるはずです。海外にはデブリ事業をやろうとしている会社もあるので,そこにアプローチをして,これは面白いねっていう感触は得ていますし,需要も感じています。今はまだ,政府が興味を持っていて技術を育てている状況ですが,技術の確立と共に,デブリを取り巻くエコシステムができてくるはずです。

―今採用にも力を入れているということですが,どんな人と一緒に働きたいですか?

もちろんオプトロニクスを読んでいる方はレーザーや光に強い方だと思います。我々の会社はレーザーと宇宙という,光業界からするとニッチでマニアックなところに絞っているなと思われると思うんですよ。そこが逆に面白いと思ってくれる人がいいですね。ただの宇宙の光学系というのではなくて,例えば望遠鏡の保持一つであっても,どうやってこの望遠鏡をどこかにマウントするんだとか,熱はどうやって分散するんだというのは,ありとあらゆる背景知識が必要になってきます。とはいえすごく面白い仕事ですので,楽しんで一緒に汗をかいてものに仕上げていくことをやりたい,そういう人がいれば嬉しいですね。

―サラリーマンがベンチャーの社長になるということはプレッシャーも相当だと思います。モチベーションはどういうところにありますか?

社内ベンチャーを立ち上げた当時からするとモチベーションは少しずつ変わってきた気がします。最初はこのアイデアはいけると思うところから始まって,少しずつ技術実証の中で,関わる人が増え,仲間が増えてきます。そうするともう一人の仕事ではなく,宇宙レーザー事業という大きなベクトルになっているんですよね。これだけ特殊な事業を成立しようとすると,多くの方の協力が必要です。そして,実際に人が集まってくると,この事業そのものをやっぱり存続,達成させたいということが使命になってくるし,それが非常に面白いと思っています。

それが私だけではなく,みんなが面白いと思ってきているっていうのがあるので,どちらかというと義務感というよりは,これがこんなに面白い仕事になってくれてすごく嬉しい,みんなから認知されて仲間が増えるというのもワクワクしています。この大きなベクトルの先に事業が回るところがありますので,そこまで,たどりつきたいです。今年度はJAXAのライダーの概念設計を受注していますので,大きな責務として,絶対に成し遂げないと,という重みはありますし,逆に重みがあるからこそ面白いというのもありますし,一言ではなかなか言い表せないですね(笑)。

(月刊OPTRONICS 2024年11月号)

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