1. プロキシミティ露光装置の概要
プロキシミティ露光は,一般に近接露光とも呼ばれ,1970年台にフォトマスクを基板に密着させたコンタクト露光の欠点を補う形で登場した。コンタクト露光はフォトマスクを基板上のフォトレジストに密着させるが,その際のフォトマスクの損傷や異物付着によるフォトマスクの消耗が激しかった。プロキシミティ露光装置は,フォトマスクと基板を近接させて露光する方式である。図1はプロキシミティ露光のコンセプトを示す1)。光源(Light Source)からの光束は,平面鏡(Mirror)とレンズ(Lens)を通して,フォトマスク(Mask)に垂直に近い角度で照射される。フォトマスクの開口部から出た光束パターンは,数十〜数百ミクロンの近接したガラス基板(Substrate)上に塗布されたフォトレジストに照射される。フォトマスクとガラス基板間の距離は,一般にプロキシミティギャップ(Proximity Gap)と呼ばれる。
プロキシミティ露光装置解像力は,露光波長とプロキシミティギャップによって式⑴により得られる。
ここで,Rは露光時のパターン(ラインアンドスペース)の解像度(単位μm)である。λは露光波長である。gはプロキシミティギャップ(単位μm)である。式⑴から,解像力を上げる(Rを小さくする)ためには,露光波長の短い光を用いてプロキシミティギャップを狭めることが有効であることがわかる。
図2は3種類の露光波長に対するプロキシミティ露光の解像力を示す。露光波長は長波長から,g線(g-line:436 nm),h線(h-line:405 nm)及びi線(i-line:365 nm)である。図2から,短波長の露光波長程,解像力が高いことがわかる。例えば100 μmのプロキシミティギャップの場合,g線・h線・i線に対する解像力は,夫々13.2 μm,12.7 μm,12.1 μmとなり,g線をi線にすると,解像力は1.1 μm向上する。プロキシミティギャップが50 μmに縮まると,解像力は夫々9.3 μm,9.0 μm,8.5 μmとなり,短波長効果による解像力の向上は0.8 μmに落ちる。即ち露光波長の短波長化は,狭いプロキシミティギャップでは解像力向上効果が低下する。一方プロキシミティギャップの狭ギャップ化は,極めて解像力の向上に有効に働く。例えば露光波長がi線の場合,プロキシミティギャップを100 μm,50 μm,25 μmにすると,解像力は夫々12.1 μm,8.5 μm,6.0 μmとなる。
プロキシミティギャップを狭めると,解像力向上が可能なるが,広いフォトマスクを極めて狭いギャップで均一に制御することは,難しいためプロキシミティ露光装置メーカーによる独自の装置設計が行われている。
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