4. FX露光装置の大型化 フットプリント
前回の図3にて示したように,FX露光装置はガラス基板の大型化に対応した装置開発が行われていった。その結果当然のことながら,装置自体の大型化となった。図16はガラス基板面積に対する,FX露光装置のフットプリント・重量・装置高さを示す1)。フットプリントとしての装置占有面積と装置重量は,ステッパータイプのFX露光装置ではガラス基板面積に対して比例的な傾向を示すが,マルチレンズスキャナータイプになると,飛躍的にフットプリントが増加している。特に第8世代のガラス基板(5.5 m2)に対しては,フットプリントが急激に大きくなっている。装置重量については,マルチレンズスキャナータイプで大幅に重量化が見られる。ステッパータイプは単一のプロジェクションレンズであったが,マルチレンズスキャナータイプでは複数のレンズが用いられるため,装置重量の増加は当然の結果と言えるかもしれない。一方で装置高さは,マルチレンズスキャナータイプでもあまり増加していない。この理由として,露光装置はフラットパネル製造ラインのクリーンルームに設置されることから,クリーンルームの高さ制限による影響と考えられる。
5. 高精細対応
5.1 解像度と焦点深度
プロジェクターレンズを使った露光時の解像度は,一般にレーリー式(Rayleigh equation)⑴によって示される。
ここで,Rは露光時のパターン(ラインアンドスペース)の解像度(単位μm)である。k1はプロセスファクタと呼ばれ,フォトレジストや処理条件によって決まる定数である。λは露光波長である。NAは開口数と呼ばれ,プロジェクションレンズからの出た結像光束に対する最大角度の正弦値である。最大角度はレンズ径に比例するため,一般にNA値と露光領域(mm角)とは,反比例の関係にある。レーリー式⑴から,解像度を高める(即ち高精細化)ためには,プロセスファクタを低下させ,短波長な露光光源を用い,開口数を大きくすることが有効であることがわかる。しかしプロセスファクタは材料や現像等の処理条件で決まることから,大幅な変更は難しく,一般に0.6〜0.8程度である2)。開口数NAを大きくすることは,焦点深度と露光領域のトレードオフが伴う。レーリー式を焦点深度(Depth of Focus:DOF)で記述すると,式⑵が得られる。
ここで,k2はk1と同様にプロセスファクタと呼ばれる定数である。注目すべきは焦点深度が開口数の2乗に反比例している点である。図17はニコン社で用いたLCD用ステッパー露光装置の露光領域と開口数のプロットデータから,レーリー式⑴と⑵によって得られた解像度(Resolution)と焦点深度(DOF)の関係を示す3)。図17において,用いた露光波長はi線(365 nm),プロセスファクタは0.6である。図17から,開口数NAが大きくなると焦点深度が急激に低下することがわかる。
焦点深度が小さくなることは,露光領域内で焦点が合う深さが狭まることを意味しているため,フォトレジストの膜厚バラツキ・ガラス基板表面の凹凸・露光ステージの平坦性に対するプロセスマージンが狭まることになる。解像度と焦点深度の関連を明確にするため,図17のデータを用いて,相対値としての関係を図18に示す。なお,図18では解像度と焦点深度夫々に,累積近似による特性傾向を示してある。図18から,開口数に対する焦点深度は,解像度よりも影響が大きいことがわかる。これはレーリー式⑴及び⑵からの当然結果と考えられる。
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