1. ミラープロジェクションアライナーの概要
TFT-LCD用のミラープロジェクションアライナーは,キヤノン㈱(キヤノン社)が開発し,Mirror Projection Alignerの頭文字をとってMPAブランドで製造販売している。ミラープロジェクションの露光装置は,1974年にPerkin Elmer Inc.(パーキンエルマー社)が半導体用露光装置として開発したものが原型と考えられる。パーキンエルマー社が開発した装置はMicralignTMと呼ばれ,初期モデルはMicralign 100である。Micralign 100の装置コンセプトを図1に示す1, 2)。
円弧状の露光光束がフォトマスクに照射された後に,Root-mirrorを介して凹面ミラー(Primary Mirror:M3)に照射される。凹面ミラーから出射された光束が凸面ミラー(Secondary Mirror:M4)に投影され,再度凹面ミラーに反射された後,Plane-mirrorを介してウエハに照射される。1970年当時は,マスクとウエハを正確に同期スキャンすることが困難だった。そのため45°ミラーを追加し,マスクとウエハの位置と方向を,ミラーアレイの下の軸を中心に旋回することにより,同期スキャンを実現している。なお,2つの45°平面ミラーはFolding Mirror Blockで一体化されている。また小さい凸面ミラーの曲率は,凹面ミラーの2倍にデザインされている。開口数はケラレを考慮して0.16以下に制限されていた。
パーキンエルマー社のMicralignのシステム構成はウエハを対象にしていたため,ウエハよりも大型のガラス基板に対して光学系を回転させるシステムは不向きであった。キヤノン社は1979年にMicralign装置を発展させたVLSI用に反射投影型露光機MPA-500FAの製品化に成功した3)。MPA-500FAは,液晶ディスプレイ用露光機の原型モデルとなった。
図2にMPA-500FAの装置コンセプトを示す1)。光学系は3種類のミラーで構成されている。Micralignで採用されたFolding Mirror Blockは,台形ミラーに集約されシンプルな設計になっている。スキャンは水平方向行われ,マスクとウエハが円弧状の露光光束に対して同期スキャンされた。露光倍率は1:1,解像度は1.5 μmであった。対象ウエハは3″ φから,最大5″ φだった。
図3にLCD用MPA露光装置システムを示す4, 5)。システムの装置コンセプトは,MPA-500FAと基本的に変わりはない。光源からの光は光源用光学ユニット(Illumination Optics)によって,円弧状(Arcuate beam)に加工された後スキャン機構上のマスクステージ(Mask Stg.)上に投影される。マスクを出たパターン化された光束は,台形ミラー(Trapezoidal mirror)で水平方向に反射され,凹面ミラー(Concave mirror)と凸面ミラー(Convex mirror)間で相互に反射し,台形ミラー下部で再度鉛直に反射された後,スキャン機構上の基板ステージ(PL-Step Stg.)上のガラス基板(Plate)に照射される。マスク(Photomask)とフォトレジスト付きガラス基板(Photoresist/Substrate)のスキャン方向は一致させている。なお3種類のミラーに対してマスクとガラス基板は,スキャンによる振動を避けるために物理的に分離している必要があると推定される。
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