INFIQ®鉛含有/非含有量子ドット:特性と応用

4. INFIQ®QDの応用

量子ドットテクノロジーをフォトダイオード,太陽電池,LEDに応用するためには,さらに表面改質を行う必要があることが多い。量子ドット表面の配位子は,長鎖有機分子で,合成制御やコロイド安定性のために最適化されている。INFIQ® QDの表面の化学特性は,驚くほど多様な用途に対応可能であり,様々な溶剤に再分散させ,多様なデバイス設計に応じてコーティングできる機能を持たせることができる。そのため,特定のプロセスに材料を適合させるために幅広い戦略を利用できる。

合成による優れた光学性能に加えて,Quantum Science Ltdの表面科学により,高温に長時間耐えうる頑丈な材料が実現した。つまり,デバイス製造における後処理時に短時間の高温にさらされたところで問題がない材料であると言える。
1.ナノ粒子の溶液処理による赤外光検出器は,光子変換効率が80%を上回ると報告されており,短波赤外(SWIR)領域における感度に非常に優れている1)
2.INFIQ®量子ドットを利用した太陽光発電では,従来型の太陽電池では利用が難しい赤外スペクトルを利用できる。地球に到達する太陽エネルギーの半分が赤外領域であるため,これは非常に有利な点である。これらのデバイスは,単接合太陽電池としても,多接合の「タンデム型」太陽電池としても設計できる2)

3.赤外発光ダイオード(赤外LED)は,監視・セキュリティ,暗視,生物医学画像,分光など,いくつかの分野において,幅広く応用できる3)

5. まとめ

INFIQ® QDは,高性能の量子ドット材料で,幅広い用途に適している。研究・開発が盛んだということは,すなわち,その光学・電子特性が十分に解明されていることを意味する。表面化学特性が柔軟で,改質が容易であるため,学術研究や光電子デバイスへの組み込みにも適した用途の広い材料といえる。

参考文献
1)M. Vafaie et al., “Colloidal quantum dot photodetectors with 10-ns response time and 80% quantum efficiency at 1,550 nm,” Matter, vol. 4, no. 3, pp. 1042-1053, 2021, doi: 10.1016/j.matt.2020.12.017.
2)M. J. Choi et al., “Cascade surface modification of colloidal quantum dot inks enables efficient bulk homojunction photovoltaics,” Nat. Commun., vol. 11, no. 1, pp. 1-9, 2020, doi: 10.1038/s41467-019-13437-2.

3)S. Pradhan et al., “High-efficiency colloidal quantum dot infrared light-emitting diodes via engineering at the supra-nanocrystalline level,” Nat. Nanotechnol., vol. 14, no. 1, pp. 72-79, 2019, doi: 10.1038/s41565-018-0312-y.

Quantum Science Ltdについて:Quantum Science Ltdは,材料イノベーションで世界をリードする英国企業であり,画像・センシング市場向けの量子ドット(QD),ナノマテリアル,技術の開発・商品化に重点的に取り組んでいる。また,QDの合成・スケールアップ,ナノ結晶・ナノ粒子の表面工学,インク配合,薄膜処理,QD半導体デバイス工学に関して,世界を代表する専門家のチームを擁している。

Quantum Scienceおよびその取り組みについて,詳しくは,Quantum Science Ltd(住所:Office S03, Techspace One, Sci-Tech Daresbury, Keckwick Lane, Daresbury, Warrington, WA4 4AB, United Kingdom)Telephone: +44 (0)1925 807 980,email: info@qscis.comまでお問い合わせください。

Quantum Science Ltdウェブサイト:www.quantumscis.com

■INFIQ® lead and lead-free quantum dots: Properties and applications
■Stuart Stubbs
■Product Director, Quantum Science
スチュアート・スタブス
所属:Quantum Science プロダクトダイレクター

(月刊OPTRONICS 2023年2月号)

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