フォトサーマルナノポアによる単一分子レベルでのラベルフリータンパク質構造ダイナミクス解析技術

著者: 山崎 洋人

ミニインタビュー

山崎先生に聞く
レーザー加熱ナノポア計測の挑戦と未来

─先生のご研究について紹介いただけますか。

(山崎)私たちは,ナノスケールの小さな孔(ナノポア)を利用した先進的な計測技術の開発に取り組んでいます。これにより,DNAやタンパク質といった生体分子を電気的シグナルとして検出することができます。今回提案しているのが,レーザー技術を組み合わせた新しいアプローチです。レーザーによる光加熱(断熱的効果)を活用することで,分子の詳細な構造解析や動態の理解を可能にする手法の開発を目指しています。

─この研究の面白さを教えてください。

(山崎)本研究の特長は,従来の計測系にはなかったレーザー照射を組み合わせた点にあります。一般的なナノポア計測ではレーザーを用いない手法が主流ですが,本研究ではレーザーを穴の周囲に照射し,加熱することで新しい現象を観測しました。この加熱によって,熱対流などの特異的な現象が確認されたところが面白いと感じています。

─課題や苦労されていることがありましたら教えてください。

(山崎)本研究の新規性はレーザーを照射して計測を行なう点にありますが,その一方で多くの課題もありました。例えば,レーザーによる加熱の度合いが条件によってばらつくため,照射強度の制御が難しいこと,また,照射を繰り返すうちにナノポアの形状が経時的に変化してしまうといった問題が生じました。これらの課題を克服するために,実験条件の最適化や設計の工夫を重ねながら研究を進めた点が苦労した部分です。

─この研究がどのように応用されることを期待していらっしゃいますか。

(山崎)将来的には,この技術をタンパク質などの複雑な立体構造の解析に応用していきたいと考えています。さらに,DNAの塩基配列や分子の微細な構造を高精度に読み解く技術へと発展させることで,最終的には小型の診断デバイスや医療応用につながる可能性も期待しています。

─若手研究者が置かれている状況をどのように思っていらっしゃいますか。

(山崎)私は海外での経験もあるのですが,その経験を踏まえると日本の研究者は国際的に見ても非常に高い技術力と発想力を持っていると感じます。一方で,日本では研究資金や研究環境が限られていることが課題です。今後,科学技術をさらに発展させていくためには,より自由に研究できる環境や,継続的な支援体制の整備が重要だと考えています。

─さらに若手や学生に向けてメッセージをお願いします。

(山崎)自分が面白いと感じたテーマを大切にしてほしいと思います。やりにくさや困難に直面する中でこそ,新しい発見や技術の芽が生まれるものです。まずは興味を持って挑戦し,続けてみることが大切だと思います。

(聞き手:梅村舞香/杉島孝弘/林諭子)

やまざき ひろひと
所属:長岡技術科学大学 技学研究院機械系 准教授
略歴:2025年−現在 長岡技術科学大学 技学研究院機械系 准教授
2023年−2025年 長岡技術科学大学 産学融合トップランナー養成センター 産学融合特任講師
2020年−2023年 東京大学 大学院理学系研究科 研究員
2016年−2020年 Northeastern University, Department of Physics 研究員
2016年3月 慶應義塾大学・博士(工学)学位を取得
2011年−2016年 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻
趣味:音楽鑑賞(ドラムの演奏をしていたこともある)

(月刊OPTRONICS 2026年1月号)

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