竹のチカラで紫外線による健康被害を防ぐ

2. 竹による紫外線の吸収

UV-Aラベルを用いた簡易UV-A透過試験及び蛍光物質を含むTLCプレートを用いた簡易UV-B透過試験において,水,エタノール,ブチレングリコール(BG)の3種類の溶媒のみではUV-AもUV-Bも吸収しないことを確認した。これらの溶媒を用いて,攪拌,加熱,超音波処理の3つの方法で竹から抽出液を得てUV-AとUV-Bの簡易透過試験をおこなったところ,各試料の溶媒はBG>エタノール>水の順で吸収効果が高く,また,加熱抽出した試料がもっとも吸収効果が高かった。なお,加熱温度は60℃,80℃,100℃で調べ,最適温度は100℃であった。そこで,BGを溶媒としてそれぞれ攪拌,加熱,超音波処理による抽出液に対して,紫外線測定器を用いて詳細計測した結果(UV-A)が図2である。本研究では,竹の加熱BG溶液にUV-A及びUV-Bを吸収する効果があることを明らかにした。

図2 抽出方法の異なる竹BG液のUV-A吸収効果 (n=10の平均値のみ表示。縦軸のUV-A透過量が低いほどUV-Aを吸収している)
図2 抽出方法の異なる竹BG液のUV-A吸収効果
(n=10の平均値のみ表示。縦軸のUV-A透過量が低いほどUV-Aを吸収している)

竹の表面は若竹色,老竹色,青竹色と成長に応じて色が変わり,内部の黄色とは明らかな違いがある。そのため,緑竹表面と内側を削り取って粉末にし,それぞれ攪拌,加熱,超音波処理により抽出し,紫外線吸収効果を調べてみた。その結果,いずれにおいても加熱抽出した竹抽出液に高い紫外線吸収効果が見られ,特に緑竹表面の効果は秀でていた。また,竹の抽出液を1~24日後まで常温保存して経過時間の影響を調べたところ,竹表面の抽出液は全く変化がなく,竹内部はわずかに変動が見られたが100 μW/cm2を超えるような有意な変化は見られず,竹全体(緑竹表面と内部を分離していないもの)の抽出液も全く変化が見られなかったことから,竹BG抽出液は少なくとも2ヶ月間は安定的に紫外線吸収効果を示すことを明らかにした。

次に,紫外線吸収効果を示す竹抽出液中の生理活性物質を明らかにするため,イオン交換及び逆相系の固相抽出を行い,分画・精製後に質量分析計および核磁気共鳴法により,p-クマル酸及び4-ビニルフェノールを同定した(図3)。

図3 p-クマル酸(左)及び4-ビニルフェノール(右)の化学構造
図3 p-クマル酸(左)及び4-ビニルフェノール(右)の化学構造

p-クマル酸及び4-ビニルフェノールの標品を用いて紫外線吸収効果を調べたところ,いずれも紫外線吸収効果が確認された。p-クマル酸は,様々な食用植物に含まれていることが報告されているが,竹では確認されていない。ただし,p-クマル酸の紫外線吸収効果については既に報告されている。4-ビニルフェノールは,ワインやビールに含まれているが,竹では確認されておらず,4-ビニルフェノールの紫外線吸収効果については世界初の報告である。4-ビニルフェノールはp-クマル酸の代謝産物であり,ブレタノマイセスが4-ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素を介しp-クマル酸を4-ビニルフェノールに変換し,さらにビニルフェノールレダクターゼによって4-エチルフェノールに還元される21)

続いて,竹抽出液を使用した日焼け止めの試作品を作製し,市販の日焼け止めとの効果を比較した。紫外線を遮断する強さは,UV-Aを遮断する強さを示すProtection Grade of UV-A(PA)による+から++++までの評価と,UV-Bを遮断する強さを示すSun Protection Factor of UV-B(SPF)による10から50+までの評価で表わされる。10%の竹抽出液を含む試作日焼け止めは,市販の日焼け止めの国内最高値であるPA++++のものより,統計学的に有意にUV-A吸収効果が認められた。また,UV-Bについても,市販の日焼け止めの国内最高値であるSPF50+のものよりUV-B吸収効果が統計学的に有意に高いことが認められた(図4)。

図4 竹抽出液で試作した日焼け止めの紫外線吸収効果の検証
図4 竹抽出液で試作した日焼け止めの紫外線吸収効果の検証

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