レーザーせん断応力計と知的乱流制御

5. おわりに

開発したレーザーせん断応力計についていくつかの実施例をしめし,紹介した。本研究は壁面の摩擦抵抗を測定することを目的としているが,高速水流,混相流,乱流という未知の複雑流体の複合的な要素の中の物理データを正確に取り出すという学術的に大きな目標がある。メカニズム解明のためには現在も模型船実験が行われている。レーザーせん断応力を用いることで,気泡流が乱流構造へどのように寄与しているのか詳細なデータが出始めている。このように光学系装置が研究レベルではなく,船舶などの実用的な装置として活躍する場が多くある。今後,模型船や実船までに応用させるためには多くの課題が残されているが,本装置による包括的なメカニズム解明に期待している。

謝辞

本研究はJSPS科研費17H01245および20K04255の助成を受けた。本実験を実施するにあたり,センサー製作について応用流体技研の吉田静男氏に技術的な支援を頂き,実験の実施について広島大学大学院の安川宏紀氏,海上技術安全研究所の川北千春氏に曳航水槽実験のご指導いただいた。北海道大学の村井祐一氏,田坂裕司氏,朴炫珍氏,田中泰爾氏,また室蘭工業大学大学院の河合秀樹氏,大上聖史氏,中村隼人氏には多くの研究協力をいただいた。ここに謝意を示す。

参考文献
1)American Bureau of Shipping, Air Lubrication Technology, ABS, pp. 1-15, (2019).
2)H. J. Park, Y. Tasaka, Y. Oishi, Y. Murai, Drag reduction promoted by repetitive bubble injection in turbulent channel flows, International Journal of Multiphase Flow, Vol. 75, pp. 12-25, (2015).
3)大石義彦,村井祐一,田坂裕司,シリコンオイルによる水平チャネル内気泡流の摩擦抵抗特性(第1報 摩擦抵抗計測とゲイン評価)混相流, Vol. 28, No. 1, pp. 71-80, (2013).
4)大石義彦,村井祐一,田坂裕司,シリコンオイルによる水平チャネル内気泡流の摩擦抵抗特性(第2報 壁面せん断応力の時間変動解析),混相流, Vol. 28, No. 1, pp. 81-89, (2013).
5)Y. Oishi, Y. Tohge, Y. Tasaka, and Y. Murai, Bubble Clustering in a Horizontal Turbulent Channel Flow Investigated by Bubble-Tracking Velocimetry, International Journal of Multiphase Flow, Vol. 120, Article Number:103104, (2019).
6)中村隼人,大石義彦,河合秀樹,村井祐一,川北千春,濱田達也,水平チャネル気泡流における乱流せん断応力とボイド率の変動値の4象限解析,日本機械学会第97期流体工学部門講演会講演論文集, OS2-19, pp. 1-5, (2019).
7)Y. Oishi, S. Ogami, H. J. Park, Y. Murai, and H. Kawai, Laser Doppler Shear Stress Sensor Developed for Bubbly Drag Reduction Ships, Proceedings of 11th International Symposium on Measurement Techniques for Multiphase Flow, p. 1, (2019).
8)Y. Oishi, S. Onuma, H. Kawai, H. J. Park, Y. Tasaka, and Y. Murai, Development of a laser Doppler wall shear stress sensor for bubbly two-phase flow measurement, Japan-U.S. Seminar on Two-Phase Flow Dynamics 2017, pp. 117-120, (2017).
9)大上聖史,大沼翔,大石義彦,河合秀樹,朴炫珍,村井祐一,模型船を用いた気泡流におけるせん断応力の波形解析,混相流シンポジウム2018 講演論文集USB, pp. 1-2, (2018).
10)H. J. Park, Y. Oishi, Y. Tasaka, and Y. Murai, Void waves propagating in the bubbly two-phase turbulent boundary layer beneath a flat-bottom model ship during drag reduction, Experiments in Fluids, Vol. 57, No. 178, pp. 1-18, (2016).

11)田中泰爾,朴炫珍,田坂裕司,村井祐一,水平気液二相チャネル乱流における人工ボイド波の伝ぱ,混相流, Vol. 34, No. 1, pp. 243-253, (2020).

■Laser shear stress meter and intelligent turbulence control
■Yoshihiko Oishi

■Assistant Professor, Division of Production Systems Engineering, Muroran Institute of Technology

オオイシ ヨシヒコ
所属:室蘭工業大学 大学院生産システム工学系専攻 機械工学コース 助教

(月刊OPTRONICS 2020年6月号)

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