レーザーせん断応力計と知的乱流制御

2. レーザーせん断応力計のシステム概要

図1 せん断応力計の光学系の基本原理
図1 せん断応力計の光学系の基本原理

レーザーせん断応力計は変位を検知するセンサー可動部とドップラー変位によるビート信号検出のための光学系と応力に分かれる。変位を検知するセンサー可動部は流体の流れる壁面に触れ(流体接地部),センサーを振り子のように振動させることで流れ方向のせん断応力を直接計測する。光学系の原理の詳細を次に示す。図1にレーザー応力計によるせん断応力測定原理の光路と外観写真を示す。装置全体は測定する壁面に対して水平に設置し,図1(b)の水の流れ方向は上から下である。

ここで各光学系の説明をする。光源装置から発振されたレーザー光は装置内部の回転散乱板を介して散乱する。このとき式⑴より,ドップラー効果により散乱角θで周波数がシフトする。

式⑴

せん応力受感部の支柱には二つの穴(ピンホールA,B)が開いている。ピンホールAは流体と接地したセンサー面と連結しており,ピンホールBはセンサー支柱に固定されて測定時に連動する。

ここで,本装置におけるドップラーシフトの原理を紹介する。レーザー発生装置内には回転散乱板が装着されており,レーザー光をドップラーシフトさせる役割を持つ。回転する散乱板の反射体によって散乱させたレーザー光は散乱角によって異なる周波数でドップラーシフトして散乱する。ここで異なる2か所のピンホールに通過するレーザー光は異なる周波数となる。ピンホールAはセンサケーシングと固定され,ピンホールBが動いたことによってレーザーAとレーザーBの散乱角θが変化すると周波数fAも変化する。また,レーザー散乱角θが小さくなれば周波数fAと周波数fBの差が小さくなる。このfAが変化することによってfAfBが重なって検出されるビート信号も変化する。ビート信号の周波数f0はこの周波数fAfBより式⑴によって定義される。

ピンホールA,Bを通過した光は平行レンズ,集光レンズによって受光装置内に置かれた透明光散乱体内部で干渉および散乱する。このとき,周波数の異なる二つの光が重なり周波数の差によってビート信号が発生する。チャネル内に水を流した際,ピンホールAがセンサー受感部と連動して動くことで,ピンホールAから平行レンズに入射する角度が変化する。これにより光散乱体で干渉する交点までの光路差が変化するため,ビート信号周波数がセンサー受感部の動きに比例して変化する。変位前におけるビート信号f0とすると,散乱角式⑵によって求められる

式⑵

また,変位後におけるビート信号f0’は式⑶となる。

式⑶

以上より,f0を基準のビート信号周波数とし,そこからのずれ量をf0’として波形データにして取得する。次に実際に得られる波形データを紹介する。

図2 実験装置のブロック図
図2 実験装置のブロック図

図2はせん断応力計測するときの各信号の経路を示すブロック線図である。受光装置によって得られたビート信号は微弱な信号増幅器で増幅させ,バンドパスフィルタによって120〜170 kHzの領域以外をカットする。抽出されたビート信号をDC変換され,データロガに記録される。このとき,センサー受感部の変位が検知されたビート信号周波数の変化となって取得される。せん断応力と変位の関係は設置環境や使用する変位受感面を用いて事前に検定を実施し,ビート信号周波数と応力の関係を検量線として作成する。検量線を用いて受感部の面積当たりにかかるせん断応力が導出される。

図3 ゼロ点(速度0)のビート信号
図3 ゼロ点(速度0)のビート信号

図3は水平チャネル実験装置に取り付けられたせん断応力計の静置状態(U=0 m/s)の負荷0状態(基準点)におけるデータである。回転散乱板を用いているため,ゼロ点でビート信号が取得可能である。これにより単に変位を測定するだけでなく,応力値をそのまま検知することができるため,せん断応力を測定したいユーザーにとって扱いやすい装置となっている。

図4 応力の変化量(ビート信号表示)
図4 応力の変化量(ビート信号表示)

図4に応力の変化量をビート信号周波数の変位で示す。取得前にビート信号はフィルター処理を施して抽出される。平均を取ると,既存応力計やデータ7)と比べ3%の系統誤差であった。ただし,本装置の対象とする乱流は,応力の変位が予想していたよりも高い周波数で振動していることが確認されている。現在,SNの向上などビート信号が安定的にかつ乱流計測上で問題のないように様々な検証を行っている。

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