4. まとめと原理的限界に向けて
白色プローブパルス光の強度雑音を削減する方法を開発し,誘導ラマンイメージングへ応用した。白色光の雑音除去の際には,参照光とプローブ光を同じ特性で分光することがカギになる。共通の分光器を適用するため参照光とプローブ光の検出素子を共通とすることで,光路を同一とした。そして,参照光とプローブ光は検出する時刻や位相で弁別し,雑音を打ち消した。その結果,誘導ラマン散乱の分光計測をしながらも,強度雑音を1/30まで削減することに成功した。
S/Nの原理的限界は,光の量子性に起因する散弾雑音で定まる。散弾雑音光電流は平均入射強度の1/2乗に比例し,信号は線形に比例するので,散弾雑音によるS/Nは平均強度に比例する。図7の結果は,入射光強度3 μWの結果であり,散弾雑音の変調度換算雑音密度は7.3×10–7Hz–1/2と計算される。ところが実験値は〜6×10–6 Hz–1/2であり,およそ一桁の改善の余地がある。この制限要因は,実際の回路特性の問題で振幅が揺らぐと信号の位相が揺らぐ効果であることが分かっている25)。
さらに,光検出素子にも出力位相が入射強度に依存する効果がある。つまり強度雑音が一部,位相雑音に変換されてしまう。現在,この効果をも削減する方法を開発中である。その方法の概要は,あらかじめ振幅雑音を観測して,振幅雑音に基づいて同期信号を位相変調する。同期信号は位相の基準なので,この位相変調で振幅変化による位相変化を打ち消して観測できる。散弾雑音の寄与を減らすために光を強くすると,光検出器による位相雑音の寄与がより支配的になるので,この問題を解決する方法はますます重要になる。
謝辞
本研究はJSPS科研費 26620117, 17K18145の助成を受けたものです。
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■Department of Physics, Faculty of Science, Tokyo University of Science, Assistant professor
所属:東京理科大学 理学部第一部物理学科 助教
(月刊OPTRONICS 2018年5月号)
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