1. はじめに
光学計測と信号処理の融合により,実空間の情報を画像化するコンピュイテーショナルイメージング技術が様々な分野で利用されている。CT(Computer Tomography)はその先駆的な例といえる。次世代コンピュテーショナルイメージングのひとつとして,イメージセンサー(受光素子が2次元配列されたセンサー)を用いずに単一の受光素子を用いたイメージング技術に関する研究が進められつつある。
単一画素による画像計測法では,コヒーレント光が散乱する場合に起こる特有の現象であるスペックル場の統計特性を利用する計算機ゴーストイメージング1, 2)と,圧縮センシング技術を用いることを前提とする方法3)に大別される。両方の手法に共通した特徴として,イメージセンサーを必要としないことが挙げられる。
この特性は検出デバイスが成熟してない,テラヘルツ光(波長:30μm〜3 mm)や短波長赤外線(波長1.4μm〜3μm)と呼ばれる波長領域の信号を用いたイメージングにおける有用性が指摘されている。これらの波長領域を用いた信号計測において,数万から数100万画素をもつイメージセンサーを用いずに,単一の光検出器を用いた装置構成で画像化を実現できるからである。
本稿では,計算機ゴーストイメージングと,圧縮センシングに基づく単一画素計測法のそれぞれを説明する。また,筆者の取り組みについても紹介する。