2. 光コヒーレンストモグラフィ(OCT)
OCTの動作原理について簡単に説明する。図1に示すように,OCTはマイケルソン干渉計をベースとし,光源に低コヒーレンス光を用いる。光源からの光がビームスプリッタにより二分岐され,参照ミラーとサンプルに入射した後,それぞれの反射光が干渉すると検出器により干渉強度が測定される。ここで,低コヒーレンス光の可干渉範囲が,光源とサンプル間,および光源と参照ミラー間の光学距離が等しい位置から有限の距離(コヒーレンス長)に限定される。
つまり,サンプル内の光軸上の局所領域における反射強度を計測することになる。従って,参照ミラーを軸上で移動させながら干渉強度を測定すると,サンプル内の光軸上の反射強度分布を計測することができる。さらに,プローブ光を面内走査し反射強度をコントラスト表示すれば,2次元や3次元のOCT断層画像を取得できる。このようにして得られる画像の光軸方向の分解能(Δz)は,光源のコヒーレンス長の半分となり,光源スペクトルがガウシアン形状で近似される場合,Δzは式⑴で表される9)。
上記はHuang2)らによってOCTが提案された時期に用いられていた時間領域(Time-domain;TD-)OCTと呼ばれるものである。TD-OCTの提案後,Fourier-domain(FD)方式と呼ばれるOCTが開発された10)。代表的なものとしてSpectral-domain(SD-)OCT11),Swept-source(SS-)OCT12)が知られる。
簡単に説明すると,SD-OCTは低コヒーレンス光源による干渉信号をスペクトル検出し,フーリエ変換することで光軸上の反射強度分布を求める。また,SS-OCTは光源波長を一定速度で掃引し,各波長毎の干渉強度を時間領域で取得後フーリエ変換し,反射層の位置を求める。FD-OCT方式では参照ミラーの移動が不要のため画像取得時間がTD-OCTに比べ高速で,感度も2~3桁向上できるため現在の市販OCTではFD-OCTが主流となっている。TD, FDいずれの方式においても,OCTの光軸分解能(Δz)は光源の中心波長と帯域に依存することは変わらず,光源スペクトルがガウシアン形状の場合は⑴式で表されるように帯域(Δλ)と反比例の関係となる。
中心波長は,医療用途に限定すると先述の「生体の窓」と呼ばれる光吸収や散乱の影響を受けにくい約0.7~1.3 μm(部位によってはそれ以上の長波長)が望ましいので,OCTの高分解能化には,いかにして光源の帯域を増大するかが鍵となる。また,⑴式に示すような光軸分解能は,光源スペクトルのパワースペクトルのフーリエ変換で得られるコヒーレンス関数の半値幅によって決まるため,光源スペクトル中にディップが存在するとコヒーレンス関数のメインピークにサイドローブが発生し,画像ノイズの原因となる13)。そのため,スペクトル形状はガウシアンなどの単峰性形状が望ましい。