を用いて誘電率ε(ω,N)と反射率R(ω,N)を結びつけることができる。ここで,これらの関数がキャリア密度に依存することを明示するために関数の従属変数としてNが明示してある。
ここで周波数が光学フォノン周波数に近いとき(ω≈ωT),式⑴のLorentzモデルの項が支配的になる。反射率はキャリア密度に寄らずほぼ1となり,この周波数帯はレストシュトラーレンバンドと呼ばれている。このことは,この周波数帯での反射「強度」を反射分光測定のリファレンスとして用いることで,反射「率」を求めることができることを意味しており,被測定物自体がリファレンスに使える波長帯を持っていると言える。一方,この周波数帯以外の多くの周波数領域において,反射率がキャリア密度に依存している。キャリア密度依存性が強い周波数を選び,測定周波数ωs(添え字のsはsensingの意)としレストシュトラーレンバンド内の周波数の光を参照周波数ωr(添え字のrはreferenceの意)とすることで,キャリア密度の違いに高い感度を持つ反射分光が実現する。これが提案するキャリア密度の測定原理である。
一つの周波数でキャリア密度が高感度に測定できる範囲は限られているが,測定周波数を適宜選択することで全体として測定のダイナミックレンジを広くとることができる。例としてGaNにおいて式⑷から得られる異なるキャリア密度における反射率スペクトルの計算結果を図1に示す。必要なパラメータm*=0.2 m,ε∞=5.35,ωT=560 cm–1,ωL=750 cm–1,Γ=15 cm–1,and γ=150 cm–1は文献値を使用した20, 22〜24)。これをみると図中S1,S2,S3で示した帯域はそれぞれ,低濃度領域(<1017 cm–3),高濃度領域(>1018 cm–3),中濃度領域(〜1018 cm–3)において,反射率が敏感に変化している。Rとして示した帯域はレストシュトラーレンバンドであり,キャリア密度に対して反射率はほぼ1で変化しない。これらを測定周波数(S1,S2,S3),参照周波数(R)として用いることで,キャリア密度の低濃度領域から高濃度領域まで広いダイナミックレンジでの測定が可能となる。