2. 反射率とキャリア密度
半導体において,プラズマ周波数と光学フォノン周波数は,THz帯の周波数に相当する。これらの振動モードは電磁波の反射や吸収の基となる。結果的にバルク材料の評価にあたって,透過測定では検出に十分な透過光を得ることが難しい場合が多い。そこで本研究では,スペクトルの特徴からキャリアの情報を得る手段として,反射測定を考える。一般に反射率を求めるには,反射の基準(リファレンス)となる標準材料での測定が必要である。しかし,広帯域なTHz帯における標準サンプルを用意し,それを必ずしも鏡面研磨されていない被測定材料のリファレンスとするのは難しい。そこで本章では我々が提案する反射率の測定方法について紹介する。この方法では,リファレンスとして別の材料を用意する必要がなく,スムーズな測定が可能となる。
半導体の反射率はその誘電率から得ることができる。THz帯の誘電率は,周波数依存性を持ち,Drude-Lorentzモデル
で記述できる21)。ここで右辺カッコ内の第2項目はキャリアのプラズマ振動を記述するDrudeモデルから由来し,第3項は光学フォノンを記述するLorentzモデルからそれぞれ由来している。ここで,Nはキャリア密度,ωL,ωTはそれぞれ縦モード,横モードの光学フォノン周波数,γ,Γはそれぞれ自由キャリア,光学フォノンの減衰パラメータである。ωpはプラズマ周波数であり
として与えられ,キャリア密度の平方根に比例する。m*はキャリアの有効質量,ε∞は高周波での誘電率でありこれらは材料によって異なる。誘電率は屈折率n,消衰係数κに対して
という関係があることから,フレネルの反射の式