紫外から青,緑には,GaNを中心にAlを混ぜて短波長側に,Inを混ぜて長波長側に伸ばしていきました。AlNは,6.3 eVと最も大きなバンドギャップを持っており,半導体というより絶縁体です。LED発光は210 nmで確認されていますがレーザー発振は未達です。
レーザー発振の最短波長はAlGaNで336 nmが得られています。良質の薄膜ができないことと,たとえできたとしてもp型とn型を作ることが出来なければ,pn接合ができませんので,効率の良い発光体とはなりません。また,特殊な用途のガスセンサーに向け,2 μm~4 μm帯のInGaAbAsも開発されています。
結晶を上手に割ると,平らな原子面が現れます。これを半導体レーザーの共振器鏡として使います。平面鏡でできた共振器で,ファブリー・ペロー共振器と呼ばれています。共振器長は3 mm程度と短いので,隣り合う縦モード間隔は0.34 nmと狭くなり,通常は100本程度の縦モードが同時に発振しています。
単一縦モード動作を安定に実現するためにレーザー構造を工夫する手法として,縦モード制御があります。そのためには,従来のファブリー・ペロー共振器ではなく,特定の縦モードに対してのみ損失の少ない構造を持つ共振器を作ればよいことになります。その代表的な例としては,活性層付近に図2の下にあるような回折格子を作る方法があります。回折格子とは,特定の波長の光だけを優先的に反射させるものです。
その作り方は2種類あります。図2は,活性層の上または下に回折格子を作る形のもので,分布帰還型(DFB:Distibuted FeedBack)と呼ばれています。もう一つは図3に描いてあるように,回折格子を活性層の両側ないしは片側に作る構造です。分布反射型(DBR:Distributed Bragg Refletor)と呼ばれています。
今までお話ししてきた半導体レーザーは,端面発光型ですが,もう一つ図4に描いてあるような面発光レーザーがあります。図5に描いてあるように,活性層の上と下に共振器ミラーを持つ構造を取るのが普通です。レーザー発振が垂直方向に生じることから,垂直共振器レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)とも呼ばれています。
レーザービームはウエハーの表面から出てきます。光は非常に薄い活性層の厚さ方向に伝搬しますので,光が増幅される長さは非常に短く,その結果レーザー利得は低くなってしまいます。したがって,十分なレーザー発振を得るためには,高い反射率を持つミラーを作らなければなりません。