光方式だからできること
―産総研の量子・AI 融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)に最初の装置を納入します
建物が完成したら装置を組み,公開は2026 年4月の予定です。光量子コンピューターは連続量子計算というジャンルですが,基本的にはアナログ計算機です。アナログで連続的な変数を離散化することによって量子ビットもエンコードできるものです。

G-QuATには各種の量子コンピューターが揃う予定ですが,他の量子コンピューターはデジタルです。しばらくの間は実行できるタスクが全然違うので,例えば同じアルゴリズムを走らせて比較するようなことはしないと思います。
―光と他の方式ではアプリケーションが違うのでしょうか?
基本的に光の方ができることが多いと思います。これはアナログ計算の方がデジタル計算よりも広い概念だからです。今,量子ビットで考えられているアルゴリズムは,将来的には光量子コンピューターなら全部できるはずですし,アナログでしかできない,アナログが向いているといったアルゴリズムは光でしかできません。
例えば10 量子ビットで一個のアナログ値を表現するようなことは,デジタルでは難易度が高いと思います。他にもニューラルネットワークを考えた時,全部デジタルだと効率が悪いと言われています。自然界の物理量は基本的にアナログ量です。それを扱うのに,わざわざデジタルに変換して,処理してまたアナログに戻すのは複雑すぎるという場面も当然あります。
完全に正確な答えを知りたいなら誤り訂正ができるデジタルにする必要がありますが,その必要がないなら,アナログのまま計算するという発想もあるわけです。まさに光量子コンピューターは最初にアナログっぽい計算をするので,実際にニューラルネットワークにも使ってみるつもりです。
―他にアプリケーションは考えていますか?
ニューラルネットワークの後,誤り耐性型量子計算に行く前だと,量子一括測定だと思っています。これは量子通信ではなく古典通信の通信容量を上げるという応用です。レシーバーに光量子コンピューターを置いてデコーディングを効率的に行なうと,通信容量が上がると言われています。それには量子的なアナログ計算が必要で,古典通信の限界,シャノン限界も超えられると思っています。