浜松ホトニクスは,長年培ってきた光電子増倍管(PMT)やイメージインテンシファイア(I.I.)の技術と新開発のメタサーフェス技術を応用し,テラヘルツ(THz)波パルスを室温で高速,高感度に検出できる高圧電源内蔵のTHz波検出器として「THz PMTモジュール」と「THz I.I.」の2種類を開発し,量産化に成功。今春より受注を開始する(ニュースリリース)。価格は「THz PMTモジュール」が2,200,000円,「THz I.I.」が3,300,000円(税込)。
THz波技術の社会実装の課題の一つとして,検出器の選択肢の少なさがある。今回開発した両製品は,THz波-電子変換にメタサーフェスを活用した,THz波領域に感度を有するTHz 波検出モジュール。従来のPMTやI.I.に搭載されている光を電子に変換する光電面を,新技術である電界電子放出を原理としたメタサーフェスに置き換えることで,フォトンエネルギーが低く検出が難しいTHz波の検出に成功した。
同社はデンマーク工科大学とともに,THz波に共鳴する微小なアンテナを利用した電界電子放出技術としてメタサーフェスの共同研究を進めてきた。今回,THz波-電子変換部であるメタサーフェスの新規技術と,同社のコア技術であるアルカリ金属の成膜技術を融合することで,メタサーフェスの機能層の成膜技術を確立した。これにより,THz波検出モジュールである両製品の開発,量産化に成功した。
また,開発した検出器の評価を行なうために理化学研究所と共同研究を行ない,波長可変THz波光源(is-TPG)の技術を導入することで,同検出モジュールの各種特性を正確に評価する技術も確立した。
THz PMT モジュールは,駆動回路や高圧電源を内蔵しており,パソコンにUSB接続するだけで簡単に使用できる。また,入射するTHz波強度に対して出力電流信号が非常に大きく変化するため,THz波の微小な変化を高感度に検出可能だとしている。
THz I.I.は,THz波ビームの形状や集光点を手元で簡単に観察できる。コンパクトな筐体のため狭い光学系の間にも直接挿入することが可能であり,さらに最大で毎秒1,000フレームの高速撮像により,従来の熱型のTHz波カメラでは捉えることが難しい高速現象を撮像可能だという。
同社は,THz波検出モジュールの開発,量産化に成功したことで,創薬や分析,半導体,非破壊検査などへの応用に向けたTHz波の基礎研究や応用研究がより加速すると期待されるとしている。
主な仕様は以下の通り。
THz PMTモジュール | ||
推奨検出周波数範囲 | 0.5~2.0 | THz |
最小検出電界強度 | 5 | kV/cm |
THz I.I. | ||
推奨検出周波数範囲 | 0.7~1.3 | THz |
最小検出電界強度 | 10 | kV/cm |