沖電気工業(OKI),損害保険ジャパン,SOMPOリスクマネジメントは,洋上風力発電所の海底電力ケーブルに対するリスク評価と事故による損害軽減を目的とした海底電力ケーブルの異常予兆検知に関する検討を開始した(ニュースリリース)。
近年,異常気象が頻発する中,その原因とされる温室効果ガスの削減が急務となっており,日本政府においても2030年に温室効果ガスを46%削減(2013年度対比)し,2050年に脱炭素社会の実現を目指す方針を掲げている。
周囲を海に囲まれた日本においては,特に洋上風力発電事業の発展が期待されており,すでに「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法:2019年4月1日施行)」に基づく洋上風力発電事業者の公募が進んでいるという。
一方で,洋上風力発電の導入が進んでいる欧州では,埋設した海底電力ケーブルが露出することによる断線などの事故が発生しており,事業の安定運営における重要な課題として認識されている。この課題を解決するために,3社は,海底電力ケーブル内の光ファイバーを活用した異常予兆検知に関する検討を開始するという。
OKIは海底電力ケーブルの周囲の温度や音響(振動や音)の変化を光ファイバーセンサー技術により広範囲に測定する。埋設状態や船舶が錨を下ろすことによる振動,底引き網漁の振動などによって異常が発生した箇所をリアルタイムで検知・発報する仕組みとなっている。
これにより,海底電力ケーブルの異常箇所を容易に把握することができ,海底ケーブルの状態把握にかかるメンテナンスコストを大幅に削減することができる。さらに既存のケーブルを使用することによって導入コストを抑制することも可能。また,船舶が錨を下ろすことによる破損事故等の発生原因の判断にも活用が期待できるとしている。
実際に通信用の光ファイバーケーブルを埋設および露出した状態を再現した実験では,埋設した状態と露出した状態で温度および音響の違いがあることが分かり,海底電力ケーブルでの異常予兆検知が可能となることが確認できたという。
損保ジャパンとSOMPOリスクは,洋上風力発電の導入が進んでいる欧州において海底ケーブルの破損事故が発生している状況を踏まえ,洋上風力発電所が安定的に電力供給を行なうために,OKIの技術を活用し,洋上風力発電設備のリスクを適正に評価し,洋上風力発電事業者への事故抑止および被害軽減に向けたアドバイスの提供や,異常予兆検知サービスを付帯した新たな保険商品の開発などの検討を進めていくとしている。