ウシオ電機,浜松医科大学,神戸大学は,ラット大腸菌投与腹膜炎モデルでの開腹手術時に波長222nmの遠紫外線を照射することで,腹腔内に残余する細菌数を減らし,併発する細菌性腹膜炎の予後が改善されることを報告した(ニュースリリース)。
有害な紫外線が除去された222nmの遠紫外線は,人体への安全性は高く,菌やウイルスへの殺菌効果もあり,注目されている。
腸管穿孔が発生すると消化管内の内容物が漏出し,細菌により腹腔内が汚染される。これにより併発する細菌性腹膜炎は,死亡率も高く,近年の医療でも課題となっている。
そこで細菌性腹膜炎を模したラットの腹腔に222nmの遠紫外線を照射して治療効果があるのか確認した。その結果,222nmの遠紫外線を照射したラットでは術後一週間での生存率が6割であったのに対し,紫外線照射なしの通常の治療方法では生存率は2割だった。
また腹膜内の細菌数と血中サイトカインレベルを測定し,腹膜内部の細菌数の減少を確認した。血清IL-1βおよびIL-6値も,非照射群と比較して,照射群で有意に減少したという。
また,222nmの遠紫外線照射による各組織のDNAダメージも検証した。その結果,222nmの遠紫外線を照射した臓器の漿膜にはわずかにCPD陽性細胞が見られた。しかし,臓器の内部組織にはCPD陽性細胞が見られず,222nmの遠紫外線は生体への安全性が高いことが分かった。
この成果について研究グループは,細菌性腹膜炎の制御への新しい治療戦略の可能性が示され,今後の臨床応用に向けて,さらなる研究が促進されることが期待されるものだとしている。