名古屋大学の研究グループは,2,2,2-トリフルオロエタノールを添加した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)電極がペロブスカイト太陽電池の耐久性を格段に向上させることを見出した(ニュースリリース)。
ペロブスカイト太陽電池は,一般的に有機無機ハイブリッド型のペロブスカイト結晶構造である CH3NH3PbI3が使用されている。この材料は,優れた光吸収特性と高い電荷キャリア移動度を有するため高い発電効率を実現するが,CH3NH3PbI3は大気中の酸素や湿気に弱く,PbI2結晶へと分解してしまう課題がある。
さらに,金属電極材料も耐久性の問題を引き起こす。例えば,銀電極はペロブスカイト構造に含まれるヨウ素と反応し,ヨウ化銀を形成することでペロブスカイト構造を分解する。金電極もペロブスカイト太陽電池内部で原子状の金が拡散し,ペロブスカイト構造の分解の要因となるという問題もある。
今回開発した太陽電池は,作製時に14.1%のエネルギー変換効率を示していたが,未封止・大気下で280日間保管した後も8.2%の変換効率を記録した。一方,従来の銀電極を用いた参照素子は,作製時に16.4%の変換効率を示していたが,未封止・大気下で260日間保管した時点で,銀電極下のペロブスカイト層が黄色に変色し,変換効率は0%にまで低下していた。
解析の結果,2,2,2-トリフルオロエタノールを添加した単層カーボンナノチューブ薄膜を電極として使用した場合,ペロブスカイト結晶の分解が抑制されていることが明らかになった。
研究グループではこれまで,単層カーボンナノチューブ電極がペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上することを示し続けてきたが,フッ素系化合物をカーボンナノチューブ電極に添加することで,耐久性が一層向上することがわかった。
ペロブスカイト太陽電池の実用化においては耐久性が最大の問題となっており,厳密な封止技術が検討されている。しかし,封止なしでも耐久性があるペロブスカイト太陽電池は,封止を施すことで,さらに実用レベルの耐久性に達する可能性があるとしている。