農工大,安価で簡便なフローサイトメトリーを開発

東京農工大学の研究グループは,低価格で簡単に作製可能なフローサイトメトリー式細胞/微粒子数計測モジュールを開発した(ニュースリリース)。

生物学や医学の研究分野において,細胞を扱う実験では細胞の増殖や生存率のモニタリング,細胞数のコントロールなど,多くの場面で正確な細胞“数”計測が必要不可欠となっている。

一方,高精度で細胞数を計測可能なフローサイトメトリーを応用した分析機器は,価格が数百万円から数千万円と非常に高価であり,導入の敷居が高いのが現状となっている。

これは,研究者のみならず,「総合的な学習(探究)の時間」で最先端の研究に触れる機会が増加した小・中学校や高校においても大きな課題とされている。そこで,研究や教育の現場において多くの方が最先端の研究に参加できるように,ある程度の精度を保ちつつ従来の機器と比べて低価格な分析機器の開発が期待されている。

今回研究では,デザインした3次元形状を正確に削り出すCNC切削と,シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン:PDMS)で型の形状を転写するソフトリソグラフィの2つの技術を用いて,コンパクトで低価格(3万円弱)のフローサイトメトリー式細胞/微粒子数計測モジュールを開発した。

シリコーン樹脂でできた本体に市販の光学および電子部品を挿し込むだけで組み立てができ,メンテナンス性にも優れている。このモジュールでは,数百円で手に入る赤色半導体レーザー(波長650nm)を光源として細胞や微粒子に照射し,検出領域を通過した細胞や微粒子が発する散乱光をフォトダイオードで検出することで細胞や微粒子の数を計測している。

モジュールの性能を検証するために,細胞と,直径が異なる2種類のポリスチレン粒子(直径5,15µm)を用いて,それぞれ計数の精度と粒子サイズの識別能力を評価した結果,細胞の計測では0~500cells/µLの範囲で血球計算盤と同程度の精度で計測できること,2種類の粒子の計測では散乱光強度の違いからサイズの違いを識別できることが明らかとなったという。

現在,研究グループはモジュールの改良を進めており,処理能力の向上や検出可能な細胞/微粒子サイズの範囲拡大,蛍光を用いた多種類の細胞/微粒子の同時計測の実現によるこの研究のさらなる汎用化を目指すとする。

研究グループは,継続的な技術開発とオープンソース化を進めることで,科学コミュニティをはじめとする社会の特定のニーズに応じたカスタマイズ性の高い研究ツールとして,新たな可能性が拓かれることを期待するとしている。

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