TDKは,ニオブ酸リチウム(LiNbO3)薄膜を用いたスマートグラス用可視光フルカラーレーザー制御デバイスの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
このデバイスの最大の特長は,従来の可視光レーザーの色制御と比較して,ニオブ酸リチウム薄膜を用いることで10倍以上高速な可視光制御が可能となることだという。
従来の可視光レーザーは電流で制御することにより色を変化させていたが,ニオブ酸リチウム薄膜に印加する電圧制御により色を変化させるため高速制御を実現した。これにより,高速制御が必要となる4K以上の映像解像度に対応でき,電圧制御になることで低消費電力化にも期待できるという。
また,AR/VRスマートグラスに向けた機能実証のためにQDレーザと共同開発で映像動作実証を行なった。QDレーザが有する網膜直接描画技術と組みあわせることに成功し,ニオブ酸リチウム薄膜を用いたデバイスが映像デバイスとして機能することを確認した。
現在,ニオブ酸リチウムはBeyond 5G-6Gなどの長距離高速光通信分野において大きな注目を集めているが,近赤外光での応用に注目が集まり,可視光への展開はほとんど検討されてこなかった。
同社ではAR/VRスマートグラス用フルカラーレーザーモジュールの開発において,可視光レーザーの将来的な速度限界を打破する手段としてニオブ酸リチウムに着眼した。研究開発の結果,赤,緑,青の光三原色全ての色を制御できることを確認した。
今回のデバイス製造においては,従来のバルクを用いてニオブ酸リチウムを基板に貼り付ける手法ではなく,大量生産に適したスパッタ法で薄膜形成を実現したこともひとつの特長だという。同社の独自の薄膜形成技術を応用することで,スパッタ法によるニオブ酸リチウムデバイスの製造と動作確認に初めて成功した。
同社は,今回のデバイス開発成果は,AR/VR用スマートグラス向け映像デバイスだけでなく,データセンターでの高速光通信や,生成AIにおける高速光配線など,今後大きな成長が期待される分野へも展開が可能だとしている。